6月24日、サン・ファンの日でした。
スペインでは、1年のカレンダー365日の各日に聖人の名前がついています。
スペイン人は最近の若者のモダンな名前を除くと、大抵の人が聖人の名前です。 ホセ、ファン、ヘスス、ミゲル、ルルデス、フェルナンド etc…….
その結果、大抵の人が2回誕生日があるような感覚があります。
例えば、11月16日生まれのファンさんは、自分の生まれたその日と、自分の聖人の日、6月24日に“おめでとう!"と祝ってもらえる仕組みになっています。 なんだかうらやましい!?
さて、サン・ファンの日は、丁度1年のうちで昼が一番長い日、つまり、夜が1年のうちで一番短い夜であり、よく“魔法の夜"と呼ばれているようです。 私は、この時期毎年忙しくて10年以上スペインに住みながら、このサン・ファンの夜には特別関心も縁もなかった。 しかし、今年は何故か周りにファンという名の友達が多くて、この夜をファン達と過ごすことになった。
昨日の今日のことなので、何故“魔法の夜"なのかとか詳しいことを調べる間がないうちにこの文章を書くことになっているけれど、素敵な夜を過ごしたので書いてみようと思い、急いで締め切りに間に合わせようと今、あくせくしているところです。(笑)
この夜は海岸で焚き火をたいて、バーベキューでもしながら過ごすのが大抵のようで、友人ファン達もそうしたかったようですが、なんせ平日の火曜だったし、海岸は大騒ぎになってしまう可能性もあり、近所のバル(居酒屋)で集まることにした。
スペイン人が集まると、たわいもなく皆が違う話題で勝手に盛り上がるので、この日もきっとそうだろうと軽い気持ちで一杯ひっかけに出かけた。 が、しかし、この日の夜は23日から24日に変わる夜の0時近くになるにつれて、なにやらセンチメンタルな雰囲気が漂い始めた。
???なーに?(笑)
23時45分くらいに“あなたも書く?”ってメモ用紙が渡された。 え? 書くって何を? なにやら、自分に起こったネガティブな出来事を全て書いて、それを0時になると燃やすそうで、そうするとそれが消える!ということである。 嫌な思い出をした小物も燃やしてよいそうである。 慌てて書き始めると、普段は思い出したくなかった嫌な思い出や、自分のネガティブな精神や、去年の恐ろしい日本の実家の火事の出来事やらが次から次へと思い出され、つぎつぎにそれを綴っていった。
夜の0時になり、遠くには花火の音が響き、私達は大きな陶器の灰皿の中でそれぞれのメモを燃やした。 その後は、その燃やしている日の上を何回かまたいで越す、という習慣もあるようで、皆で燃えている灰皿の上をまたぎまわった。(笑)
最後にメモが燃え尽きる頃、当然といえば当然だが、灰皿が“パリンッ!”と割れて火は消えた。 その音を聞いて、私はなぜか、なんとすっきりしたことだろうか!!!!!
ネガティブな出来事や精神を思い出すという行為をしておきながら、そのあとこんなにすっきりするなんて! なんて不思議な夜。
例えば。 日本の実家の火事は“事故”なのである。 悲しい、悲しい出来事に変わりないが、確かに“事故”なのである。 それなのに、私には大きなある種のトラウマがはびこっているのである。 火事のときのその空気の熱さや、自分の叫び声をいつまでも自分で抱えていたりするのである。 それは、きっと永遠に私の記憶から消えるわけではないのだろうが、灰皿が割れた音がした瞬間、すーーーっと気分が軽くなった。
いろいろな意味で新しい空気が自分に入った気がした。
私は、皆のお付き合いでやっただけだったのに!(笑)
何かにくじけたりすると、とりあえず人間はネガティブになったりする。
私は、ポシティブな人間を気取っているけど、実は沢山ネガティブがはびこっていて、強がっているというか元気にしてしまう、という傾向にある人間だけど、自分の弱さを認めてから“えいっ!”ってやってしまうこのサン・ファンの不思議な習慣はなかなか面白いな、と思ったので、皆さんもやってみてはいかがですか?
来年の6月24日のカレンダーに印をつけておいてもいいかも?