先日、毎年恒例の大学のゼミOB・OG会のお知らせメールが届いた。
これは、在学中からいつも毎年11月後半に、ゼミの教授であるF先生の誕生日祝いを兼ねて現役学部生と院生が開催しているもので、F先生を慕ういろんな世代のOB/OGが集まる。昨年はF先生の還暦祝いも兼ねて盛大に行われた。
私も、恩師であるF先生が大好きで、同期の友人(参加するメンバーはほぼ決まった数人だけなんだけど)にも会いたいので、毎年できるだけ参加するようにしている。
そして、今年のお知らせメールを見てちょっとびっくり。この11月から、F先生が大学の学長に就任されるとのこと。
卒業して早11年。
当時、“おじいちゃん教授”が多かった私の学科では“若手”の教授だったF先生。その後、学科主任になり、数年前からは学部長。いずれは学長になることはわかっていたけど、いよいよだ。恩師の“出世”ニュースは、とってもおめでたい。
ただ、そのために来年度からは講義もゼミも担当されないとのこと。それを知って、おめでたいけれど、ちょっと寂しい気持ちになった。だって、F先生の講義は本当に面白く、興味深いテーマばかりで私は大好きだったから。
私がスペインにはまるきっかけになったのもF先生の授業だった。F先生のゼミに入りたくて、かなり変則的な時間割をこなしたことを覚えている。ゼミも、指導は厳しかったけど、学生のやりたいことを伸ばしてくれるものだった。今でも先生の講義のノートは大切な宝物だ。
今後、後輩たちがそんな先生の授業を受けることができないなんて・・・。学界の未来の大きな損失だ!・・・というのは大げさかもしれないけど、本当に残念なことだと思う。
でも、授業がないことを一番残念に思っているのは、卒業生でも現役生でもなく、F先生自身のような気がする。数年前に学部長に就任された頃、F先生は「学部長なんて、余計な事務仕事ばかり増えて、授業の準備やゼミの指導の時間がなくなるし、自分の研究や執筆なんて全然できないんだから。」とボヤいていた。それを聞いたとき、なんだかF先生らしいなと思った。誰よりも授業や研究に熱心で、若い学生たち以上に好奇心や探究心に旺盛なF先生だから。
卒業のとき、F先生からこんな言葉をもらった。「学ぶ心と好奇心は、いつまでも持ち続けて下さい」
私がスペイン留学を迷っていたとき、年賀状にはこう書いてあった。「今しかできないことに挑戦しなさい。君にはその力がある」
私が入院して長期リハビリに苦しんでいた時期にはこう言ってくれた。「ゆったりと、地中海ペースでのんびりリハビリして下さい、スペイン人のようにね」
先生からもらった様々な励ましやアドバイスは、全て私の人生の中でいろんな勇気となって心に残っている。そんなF先生に出会えて、先生の貴重な現役時代に授業を受けることができて、人生に大きな影響と指針を与えてもらえた私は、本当に幸運だったと思う。同じようなことがほかにもあった。私は数年前に入院して大きな手術をしたが、その主治医であり執刀医であるK先生はすごくいい名医で、K先生の人柄と腕を信じて安心して手術に臨めた。今でも定期検診で会えるのが楽しみであり、その都度たくさんの勇気をもらっている。
そんなK先生は、私の入院時は副院長だったが、その翌年から院長になって、手術や外来の担当日も減ってしまった。そして、あと数年で定年退職となる。
このK先生に関しても、出会えて、貴重な現役時代に執刀してもらえて、同じく人生に大きな影響と指針を与えてもらえた私は、やはり幸運だったと思う。
だから、いつも「一期一会」の思いで、すべての出会いを大切にしていきたい。あらためてそう思った。とりあえず、来月のゼミ会でF先生と楽しく杯を酌み交わすとするかな。