2008年、今年はオリンピック開催年だ。
開催地の北京はまだまだ問題が山積みのようだけれど、4年に一度の大きな大きなお祭り。
このお祭りで表彰台に上るスペイン選手たちにとって、その感動を分かちたい人たちにとって「スペイン国歌を歌えない」というのは長年議論され続けてきた問題だった。
「国歌を歌えない」
つまり、ご存知の方も多いだろうけれど、スペイン国歌には歌詞がないのだ。 だから、表彰台で感激に目を潤ませながら、掲揚される国旗を見ながら国歌を口ずさむ他国の選手を見ながら、同じようにオリンピックでは国歌を歌いたいという思いが強かったのかもしれない。
そこで、スペイン・オリンピック委員会は昨年からオリンピックでスペイン国歌を歌えるよう、歌詞を一般応募していた。 「オリンピックでスペイン国歌斉唱しよう!」プロジェクトだ。
歌詞つきの国歌はこれまたスペインを代表するオペラ歌手、プラシド・ドミンゴ氏が朗々と歌い上げ、CDにもされる計画も発表されていた。
国を挙げてのコンクールかと思いきや、意外に応募者も選考過程も盛り上がりに欠けているなぁ、と思っていた。 年明け早々、最終的に多方面の知識人が構成する委員会で歌詞が一般応募の中から選び出され一旦決定したのだが、発表されるや否や、やはり、というべきか物言いがついた。
「昔の独裁時代を思い起こさせる」と多くのスペイン国民から大不評を買ったのだ。 実はスペイン国歌、フランコの独裁時代に歌詞があったことがある。 この歌詞を少し見てみると、なんと、歌いだしの言葉が同じなのだ。
その言葉とは、「ビバ・エスパーニャ」。
訳は「スペイン万歳」なのだが、ただ歌いだしが同じというだけでなく、この言葉はフランコ支持の人たちが常に使っていた言葉で、今でも右よりの人たちや軍隊関連ではこの言葉をよく使う。
日本でも同じだと思う。 いきなり国歌の歌詞が「日本万歳!」から始まるとおったまげる、というのは想像に難くない。
愛国心を高揚させるのかもしれないが、いくらなんでも、これはないだろう、と外国人の私がみてもそう感じる。 ましてや、独立志向の強いカタルーニャやバスク、その他もろもろの地方の人たちがこの歌詞を歌いたいと思うわけがないだろう。
そんなわけで、結局「オリンピックで国歌を斉唱しよう!」プロジェクトは白紙に戻ってしまった。
よって、また今年のオリンピックはスペイン国歌は音楽だけで選手はじっとそれに聞き入る(歓喜の中、勝手に歌詞をつけたり、でたらめな言葉で歌う場合もあるが)という光景が繰り返されることになる。
さて、今年のオリンピックではその光景がいくつ見られるのか。
そして、2016年オリンピックにはマドリード市が再びオリンピック開催地に候補に名乗りを上げている。(2012年のオリンピックは最終選考に残るがロンドンに敗れる)そのときはまた「歌詞をつけよう!」という動きがあるのだろうか?
なんだか、最後までやはり合意に至らなくて結局歌詞がないのが「スペインらしい」と言えなくもないな、と思うのけれど。