「キャンセル待ちの成田―マドリード間の全区間の席がご用意できました」
というJALからの嬉しい知らせをもらったのは、スペイン行きを予定していた出発日の10日前。 そのさらに前日には、
「いまさら席がとれたってもう仕事の調整なんかできないよ。 それに、もうとれっこない」
とぶーたれていた私。
でも、諦めモードから一転。 職場に飛んで行った。
「ずっと前から言ってたスペイン行きの件、あれ、もう10日後ですけど、大丈夫ですよね。 よろしく〜」
やたら「ずっと前から」を強調して強行突破で交渉成立。 やったー! 久しぶりのスペインだ! というわけで、行ってきました。
今回は、いや、今回も? じっくりと予定などたてられなかった。 とにかくわかっていることはマドリードでの離着陸。 そして、私のことだからきっとアンダルシアに南下するであろうということ、のみ。 だから、当然といえば当然ながら、全く無計画で行き当たりばったりの旅となったことは言うまでもなく……。
マドリードを基点とし、いつものようにアンテケラ、マラガを巡り、そしてグラナダとトレドを加えた。 アンテケラとマラガには、それこそ10年来、仲良くしているスペイン人ファミリーがいる。 それぞれの家庭に突然、「いまマドリードにいるから」と電話をした私を「なんでもっと早く連絡しないんだ」と責めつつも、喜びの声をあげ、歓迎してくれたことには感謝感激。
「もちろん、うちに泊まるでしょ。 ここはTakaの家だから」
という、お決まりのセリフも私には嬉しい。
「Takaがパエリアを食べたいって言うのはわかってるんだから」
なんて言われながら翌日の昼食を約束。 し、か、し……。
「マドリードを羊が行進する?」
9月9日、日曜日の午前から、マドリード中心地を、毎年恒例となっている祭り、羊飼いたちによる羊の行進(移牧の権利を主張するパレード)があると聞き、カメラを片手に早朝から待ち伏せ。 住民や観光客らがSolの道路脇を埋め尽くすなか、私も観客の一人として場所を陣取った。 今年のパレードは世界32カ国が参加したとあり、首都マドリードの中心地Solの街なかは異様な盛り上がりを見せた。
Solを通る羊たち 1000匹にも及ぶ羊の群れと、各国の民族衣装を着た羊飼いたちのパレードは異様で面白い。 あ。 もちろん、羊の群れが去ったあとの通りには、彼らの落し物で地面も賑やかでしたよ……。
まぁ、そんなこんなで羊のパレードに感激し、ふと時計を見るとすでにお昼。 グラナダとマラガの中間にあるアンテケラには飛行機で飛んでいってもとうてい昼食には間に合わない。 やばい。 南バスターミナルに駆け込みバスの時刻を調べると、げげげげげ。 移動に6時間もかかるじゃないか。 そのうえ、到着は8時45分。
もちろん夜のね。 これはまずいということで、慌てて電話。
「ごめん、夜につく!」
すると、びっくり。
「そんなことはわかっているわよ。 マドリードから出る直通のバスは1日、2本しかないもの」
じゃ、あの昼食の約束はなんだったんだ!?
まぁ、そんなこんなで夜についた。 夜といっても、まだこの季節の9時なんて、夕暮れ時。 オリーブ畑を抜けて辿りついた友人の家で、久しぶりの再会を果たす。
翌朝は友達にお願いして葡萄の収穫を観に、その友達の農家の畑へ出向いた。 一帯はマラガワイン(甘いマラガ産ワイン)の原料となる葡萄の産地で、バケツを片手に職人たちが収穫に汗していた。 この葡萄から、あの甘いワインが出来るのかと感慨深げに見ていると、「食べてみるとわかるよ」と声をかけられたので、実際に口に入れてみた。 これが旨い。 旨いなんてもんじゃないってくらいバカ旨! 強烈な甘みが口のなかいっぱいに広がる。 たまらない。 これまで食べたことのあるどんな葡萄よりも美味しかった。
葡萄の収穫の帰りにはスーパーへ寄ってキャベツと豚肉を購入。 日本から運んだ3食入りの焼きそばを作るためだ。 粉のソースもついている。 ニンニクとピーマン、玉ねぎとキャベツ、そして豚肉を最初に炒めて軽く塩で調味。 そこに麺を入れ、ソースで味付け。 この味がスペイン人に合わないはずはない!と確信しながら作った。 そして案の定の大好評。 インスタントソースのおかげで私もブエナコシネラと呼ばれ、大喜び。 そして、彼らは口々に言った「メ グスタ ジャキソバ」と。
さて。 私はスペインに何をしに行ったのか? マラガでも「ジャキソバ」を作って一緒に食べた。 結局、私の大好きなパエリアやアルボンディーガスは次回の旅までお預け。 でもね、まぁいい。 いつも、私のスーツケースの中は食材やおやつでいっぱい。 スペインに行くときには日本のもので。 日本に帰るときはスペインのもので。 私の知っているスペインの人たちに日本を好きになってもらいたい。 懐かしんでもらいたい。 私の知っている日本の人に、スペインを好きになってもらいたい。 もっと知ってもらいたい。 そんな“思い”でいっぱいの証。
旅の行程を全部は書ききれない。 たったの一週間なのに、濃い、深い滞在ができた。 ユーロが高くてヤんなるよなんて嘆いても、やっぱりスペインはいいな。 スーパーのレジや肉屋の順番待ちで死ぬほど疲れても、それでもスペインはいい。 飛行機のフライト時間が長くても、それでも折り返したくなる。 また戻ろう! すぐ戻ろう。 そう決めた。
そうそう。 マドリード最後の夜に行ったタブラオの前で、連れがひったくり未遂に合いました。やっぱり油断は大敵です! 皆さんもどうぞ気をつけて!ね。
また、スペインでお世話になった皆さまには心からありがとうございました!
& Un beso!
※まだ全然まとまっていない状態ですが、とりいそぎ流し込んだフォトアルバムを紹介します。よかったら観てね!