スペインの高校(Instituto)は13歳〜18歳の日本でいえばいわゆる中高一貫教育。私が受け持ったクラスはtercero, cuarto de ESOと、primero, segundo de Bachilleratoと呼ばれる4学年で、日本の中学3年生〜高校3年生の年齢に相当する。
ちょっとここでインターンの学校レベルについて話しておこう。
私はインターン登録時に小学校レベルを希望していたので、派遣先が高校になったと聞いたときは正直言ってちょっと心配だった。高校生相手に何が教えられるか、高校生の質問に答えられるか、と。
でも、正解だった。高校生ということでこちらもそれなりの高度な内容で授業準備をしなければならないし、難しい質問も多く非常にいい勉強になる。私のつたないスペイン語を一生懸命聞いて、間違いを直してくれる。日本人でありまだ町や学校に慣れていない私の立場を考慮して、いろいろ手伝ってくれる。高校生といってもみなとても素直で、ませてはいるが最近日本で問題になりがちな反抗的、暴力的、無気力な生徒は殆ど見られない。小さなかわいい子供達と楽しく折り紙でも、というイメージで小学校レベルを希望するインターンが多いが(最初は私もそうだった)、日本紹介の授業というよりは子供のおもりで終わってしまったケースもあるようだ。学校レベルの選び方は、インターン生活に何を求めるか、どのような授業をしたいかという各自の考えによるが、少なくとも私は高校ということでかなり充実した内容の濃い活動ができ、いい勉強になっていると思う。
そして最初の派遣先、マドリードの高校I.E.S. Isabel la Cato’licaにて、2000年4月〜6月の間に実際に行った授業例を紹介してみよう。
あらかじめ準備していたテーマ以外にも特に生徒・先生のリクエストや、現地で自分の思い付きで追加したものも多い。初めてのテーマをやる時はすごく難しい。同じテーマを違うクラスで繰り返して、3クラス目くらいになってやっと満足の行く授業ができるという状態で、最初のクラスとはだいぶ違う内容になっていたりもした。私の説明もプリントもいつも間違いだらけであったが、みな辛抱強く直してくれ、そして授業を楽しみにしてくれていた。
全般的には視聴覚教材をうまく活用し、さらに見るだけ聞くだけ読むだけという状態をできるだけなくすことが大事。実践、体験型の授業がやはり成功する。そして高校生には、ちょっと一歩進んだ内容を付け加えることも重要だ。
*** 日本語に関するもの ***
平仮名・カタカナ・漢字の3種類の文字を説明
日本語で名前をかく
日本語のあいさつ
日本語の数字
日本語でのジャンケン
日本語で果物の名前とフルーツバスケットゲーム
いくつか教えた後日本語でフルーツバスケット(イス取りゲーム)をした。
これは野菜でも何でも応用可。
日本の色の名前と色オニゲーム
同じくいくつか教えた後日本語で色オニゲームをした。
*** 日本の全般的紹介 ***
日本地図に地名を書いたポストイットを貼らせて名所を説明
スペインと日本の比較(地理、気候、人口、物価など)
日本についてのいろいろなスライド(自作)
*** 日常生活様式 ***
日本の家の特徴(和室、靴をぬぐ、風呂や和式トイレの使い方など)
*** 日本の学校生活 ***
日本の学校の時間割
私の母校(高校)の様子が映っているビデオ
*** 日本料理と箸の使い方 ***
箸の持ち方、割り箸でお菓子をつかむレース
調理実習はできなかったので日本料理は写真などで紹介しただけ
*** 着物の説明、浴衣を着てみる ***
着物のパンフレットと、持参した浴衣を使用。
*** 書道 ***(名前を書く、好きな言葉を日本語で書く)
日本語の授業のあとにやると効果的。
*** 折り紙 ***(簡単なもの数種類、折り鶴、ぴょんぴょんカエルを作ってレースをする)
カエルの折り紙は大好評(スペイン人は一般にカエルが好きらしい)。
広島と長崎の原爆の話(折鶴を折るときに)
原爆の話は、どうしても伝えたかった。どのような形で話すか考えた結果、
折り紙の授業の延長として、「原爆の子の塔」と折り鶴で有名な佐々木貞子さん
の話をして、みんなで折り鶴を折った。
*** 日本の伝説・童話 ***
(七夕、かぐや姫、一寸法師、花さかじいさん等)
スペイン語でストーリーを書いたプリントを生徒に配り、順番に読んで
もらいながら私が自作紙芝居をめくっていった。
紙芝居は絵が変わるたび注目してくれるので高校生にも通用する。
生徒に読ませることで物語の理解度も良く飽きることもなく、こちらも生徒の
発音を聞いて勉強できるのでこの方法は成功だった。
もちろん七夕祭り、お月見、鬼の話など関連した話題につなげられる。
*** 日本の音楽 ***
伝統音楽(写真とテープで琴を紹介)と現代の流行音楽
「聖しこの夜」を日本語で歌う
アニメソングを日本語でうたう
スペインのアニメ市場は殆どが日本モノだ。ポケモンの人気は
末恐ろしいほど。ドラえもんも健在。高校生に人気なのはハイジ
(スペインではHEIDI:ヘイディ)とドラゴンボール(Bola de drago’n)。
でも授業中にアニメの話をすると先生方は渋い顔をするので、
日本語の歌詞プリントを配ってこっそりと教えた。
*** 日本のスポーツ ***
日本のスポーツ(相撲、武道、野球、サッカー)の話と相撲のビデオ観戦
*** 日本の伝統小物・おもちゃ・遊び ***
*** 干支とそのいわれ ***
干支はHoro’scopo chinoと呼ばれ数年前にスペインで大ブームだったらしい。
かなりの人が自分の干支を知っていて驚きだが、イノシシと豚を混同している
人も多い。
*** 日本の宗教と宗教観 ***
複雑なテーマなのであえて自分からは提案しなかったが、たくさん質問された
ため途中で準備した。
*** 茶道 *** (実際にやるチャンスがなかったので紹介のみ)
*** そろばんの使い方 *** (実際にやるチャンスがなかったので紹介のみ)
*どのクラスでも人気だったのが習字、折り紙、日本の伝統玩具、箸の使い方。伝統玩具はエキサイトしすぎて壊れてしまったものもある。武道、サムライ、忍者についての質問も多い(うまく答えられなかったが)。
9月からは研修先が変わる。この経験(成功・失敗両方)を生かして、新しい研修校でもっと良い授業ができればよいのだが・・・。
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