Carmenのスペイン語こぼれ話
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3. 外来語あれこれ |
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日本語とスペイン語の比較対照は奥の深い研究分野で、系統の全く異なる両言語の比較をするのは容易なことではない。 でも、二つの言語を見比べていると時折興味深い事実に出くわすこともある。 スペイン語のカタカナ表記の問題もそんな面白いテーマの一つであった。 このSPAINetのサイトでは、スペインの地名に代表される固有名詞のカタカナ表記に関する原則を作成し、一部の例外を除いてサイト内のスペイン語のカタカナ表記をできるだけ統一する方針を掲げている。 スペイン語は日本語と音声的に似通っているように思えるが、似ているようでもやはり違うのだ。だから、スペイン語の単語のカタカナ表記に複数の変種が存在するのである。 外国の地名などの固有名詞を自国語で表記するという試みは古くからおこなわれてきた。 今でこそ西洋の言語に由来する外来語はカタカナ表記されるが、漢字を宛てるという昔ながらの習慣もかろうじて生き残っている。 前回の辞書の話で、「スペイン」は漢字の宛字で「西班牙」と書かれることを述べたが、現代人はこんなもの教えられなければ簡単に読めやしない。 最近、この外来語表記の話題にうってつけの本に遭遇した。 宛字外来語辞典編集委員会編『宛字外来語辞典』(1979年、柏書房)である。固有名詞の宛字が満載のこの辞典は拾い読みでも十分に楽しめる。 スペイン関係の宛字が案外たくさん収録されていたので少し拾ってみた。(注:以下の用例はすべて同書第II章 A 一般外国地名 pp.149-237 より抜粋して引用) さて、皆さんは(1)-(10)の宛字のスペインの地方名または都市名のうちいくつ判読できるかな。 (1) 馬徳里 (2) 花冷西亜 (3) 加斯知流 (4) 加太籠亜 (5) 莫爾西亜 他にも面白い用例があるのだが、特殊な漢字を使っているためこのコーナーで取り上げるのを断念したものもある。また、上記の用例の中には、綴りの変種を他にいくつも持つ語がある。 どこかで見たような(1)は例えば、馬徳利や馬土立など。 (2) も瓦稜西亜という変種があるが、花冷西亜のほうが美しい街という風情が感じられる。 正解を見れば、宛字の漢字がある程度限定されていることに気づくのだが、それにしても一体誰がこんな宛字を考えついたのだろう。 単に音を借りただけとはいえ、漢字が表意文字であるがゆえに、宛字の地名はその土地に対する摩訶不思議なイメージをも私たちにもたらしてくれる。 上記の地名の読み方の正解は、(1)マドリ → マドリード (2)ハレンチア → バレンシア (3)カスチラ → カスティージャ (4) カタロシア → カタロニア → カタルーニャ (5) モルシア → ムルシア (6) ガリシア (7) ギブラルタル → ジブラルタル (8) マヨルカ (9) サラマンカ (10) ハリソレツム→ バリャドリード (10)のハリソレツムなんて読みはどこから出てくるのかと思って地名学の文献をひもとけば、ラテン語の Vallisoletum (= valle de los olivos)に由来する地名だという説があるとか。 だけどいろいろ調べてみても日本との交易が始まった頃にはもう現在の地名になっている。 それなのになんでわざわざそんな古い地名のほうに漢字を宛てるのか。 ようわからん。 一つの地名に宛字の変種が複数存在する場合もあるというのは、結局、現在の私たちがスペインの首都の名はマドリードだ、いや、マドリッドよ、いいえ、マドリーですよ、などと口々に自分の好みや意見を述べるのと大差ないってことなのだよね。 外来語の表記って昔からみんな苦労してたんだ。 スペインの地名のカタカナ表記について仲間とああでもないこうでもないと意見を述べあったことを思い出し、なんだかおかしくて仕方なかった。 Carmen |
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3. 外来語あれこれ |
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