スペイン語のカタカナ表記について

　日本語で書かれたスペイン関係の出版物は今や相当な数にのぼるが、地名や人名を中心としたスペイン語の固有名詞のカタカナ表記には著しいばらつきがある。　そもそも日本語とは体系が大きく異なる外国語の単語をカタカナで表記するという試み自体に無理があるのだが、スペイン語の単語の読み方を必ずしも知っているわけではない人々を相手に日本語で情報発信するのであれば、読み方を付記せずアルファベット表記のままにしておくわけにもいかないだろう。

　＠Spain の開設にあたり、私たちは複数の執筆者によって書かれる原稿の中に登場するスペイン語（特に固有名詞）のカタカナ表記のためのルールづくりを目指した。　 それをまとめたものが「スペイン語のカタカナ表記の原則(ORTOGRAFI'A DE "KATAKANA")」である。

　スペイン語と日本語は発音が比較的似ていると言われている。　しかし、スペイン語の固有名詞をカタカナ表記するとなるとこれは一筋縄ではいかない難問となり、表記のばらつきが出てくる。　概してスペイン語をよく知る人間ほど現実のスペイン語の音とかけ離れた表記が気になるものである。　しかし、慣用表記が定着しているにもかかわらず原音重視の表記にこだわりすぎると、それはスペイン語を必ずしも知っているわけではない人々にはなじみの薄い表記になってしまう可能性が高い。　語学関係のテキストならば原音に忠実な表記をより重視するという態度も必要かもしれないが、それ以外の目的で書かれる文章においては、慣用的なカタカナ表記がともすれば原音からかけ離れがちであってもある程度致し方ないものと割り切らざるをえない。

　しかし、言語は時の流れとともに変化するものである。　近年、日本語メディアが取り上げるスペイン関係の情報が質・量ともに充実し、同時にスペイン語の知識を持つ人も増えてくるにつれ、すでに慣用として用いられている数々のカタカナ表記の中でもやはり相当の違和感が感じられるものが出てきたように思う。　また、スペイン国内で現地固有の言語とカスティージャ語の二言語が併用される地域の地名表記の取り扱いは、カスティージャ語のメディアでも年々見直されつつあるのが現状である。

　以上のことをふまえて、スペイン語やスペインの言語事情を多少なりとも知っている私たち ＠Spainのスタッフは、内閣告示・訓令やマスコミのハンドブック、その他観光関係の出版物など複数の資料を比較参照して、スペイン語の固有名詞のカタカナ表記の傾向や慣用について調べると同時に、スペインの言語事情をふまえ、現時点で適切と思われるスペイン語のカタカナ表記の原則をまとめあげた。

　長音符号の表記の有無については個人的な好みが多少なりともあるのは十分承知しているが、私たちの原則では文字の配列や用例を具体的に提示して、できるだけ規則化した記述を試みた。アルファベットのカタカナ表記の原則を作る際も慣用と実際の音声表記の両方を考慮した。どちらを重視しても例外扱いの語が出てくるのは避けられないのだが、できるだけ簡潔でわかりやすい規則化をめざしたつもりである。　また、地方語の地名表記に関しても、スペイン人ではなく日本人がこのサイトの主たる読者であることを念頭に置いた上で原則をまとめた。

　外国語のカタカナ表記においては、誰もが100％納得する原則をまとめあげるのはほぼ困難であると思われる。実際、この原則も ＠Spain スタッフ全員の個人的な表記の嗜好と必ずしも一致しているわけではない。

　しかし、私たちはこの「スペイン語のカタカナ表記の原則」をこのサイト上に掲載することによって、私たちなりに練りあげたカタカナ表記を提唱し、日本語でスペインについて情報発信する者としてスペイン語も日本語も同じ様に大切に扱うという私たちの姿勢を示したい。　基本的には慣用優先の立場をとっているが、今後スペインで生じる言語上の変化をもしっかり見極め、必要があれば改訂をおこなう、というふうに柔軟に対応していくつもりである。

4．非カスティージャ語の表記： 細則 (4-1.から4-5.まで)

[Ver. 1.0] 2000年6月9日(日本時間)午前1時　
[Ver. 1.1] 2000年6月22日(日本時間)午前1時
[Ver. 2.0] 2001年6月20日