JOANのカタコト

 

5.Windows

 Windowsには、カタルーニャ語版が存在します。でもだからといってカタルーニャ語を使って暮らしている人は皆、パソコンを自分の言語で使っている、あるいは使うことができるという状態ではありません。

 Windows95のカスティージャ語版が発売されてから半年ほど後の1996年に、マイクロソフト社は独自の判断でカタルーニャ語版Windows95を作りました。この時点で同社はどういう理由だったのかは不明ですが、この言語の存在の重要性に気がついていたかのように思われました。もっともこの版は言語的には間違いも多く、宣伝もあまりなされず商品価値としてはあまり高くはありませんでした。ちなみに日本語版のWindows95でもキーボードの言語選択のところで、あまり意味はないのですがカタルーニャ語を選ぶことができます。

 ところがしばらくして、Windows95カスティージャ語版のマイナーバージョンアップには対応したカタルーニャ語版は出されませんでした。そしてWindows98が世に出たときには、当然カタルーニャ語版もすぐに出されるだろうとの周囲は大きな期待をしたのですが、マイクロソフト社は自主的には何もしませんでした。これに対しカタルーニャ語のOSは社会に必用だとするカタルーニャ州政府ジェネラリタットは、8千万ペセタの補助金をつけて98の翻訳版を約1年遅れで発売させました。しかしまた、その後98の第2版はカスティージャ語だけだったし、その間に発売されたWindowsNTシリーズや2000なども今日に至るまでカタルーニャ語版は登場していません。

 スペインで売られているWindowsは、ほとんどがカスティージャ語版で、英語版や日本語版は見たことのない人が多いようです。では一体Windowsがカタルーニャ語版だとどこが違うのでしょうか。起動したときに現れるデスクトップの文字がすべてカタルーニャ語だし、現れる窓の上下に書いてあることばもヘルプファイルも皆、同言語に翻訳されています。それらは大変重要なことなのか、全くもってつまらないことなのかの判断は、部外者の私には手にあまります。ただ日本語Windowsの扱いに慣れた人なら、ほとんどそこに書いてある字を読まなくても、アイコンをクリックする等の動作で、外国語版のそれを動かすことができることから判断して、Windowsのカタルーニャ語版への翻訳そして販売は、かなり政治的理由での象徴的なできごとだといえます。

 さて、個人的な興味で近所のあるコンピュータ専門店に行って、Windowsのカタルーニャ語版は簡単に手に入るかどうか尋ねたことがあります。すると答は、プレインストールされたマシンはすべてカスティージャ語版になっているので、どうしてもカタルーニャ語版が欲しければソフトをとりよせて当店でインストールして売らないことはないけれど、1ヶ月程度の時間と差額8000ペセタが余計にかかるとのことでした。この差額とはソフト自体の値段がカタルーニャ語版の方が、その程度割高なことによって生まれるものです。そしてまた自分でソフトを買ってきてインストールしようと思っても、カタルーニャ語版は全然といっていいほど店頭に並んでいない現実もあります。

 で、大変な苦労をしてカタルーニャ語版Windowsの入ったパソコンを手に入れたとしても、まだ色々と問題があります。マイクロソフトのソフトウェアのWordやExcelは、翻訳されていないのでカスティージャ語版を手に入れてそのまま利用しなければなりません。つまり一つのパソコンも現実社会を反映してか、バイリンガルになってしまうのです。日本語を使うのとは違い、使うコードページが同じなのでこの2言語のソフト間での操作上や表示上の問題はありません。ただその場合カタルーニャ語関係の辞書やスペル・文法チェッカーはそこに入っていないので、別に購入して利用することになります。それらは値段も安くはないのですが、使い易さや速度にまだまだ改善の余地の大いにあるレベルです。

 そして数あるソフトウェアやCD‐ROMは、カタルーニャ語圏で売られているものであってもほとんどがカスティージャ語だし、そうでないものとしては、カタルーニャ語より英語の方がよく見かけるということになってしまいます。カタルーニャ語のソフトで存在するのは子供の教育用と、言語そのものに関係したものの少しだけなのです。そしてまたコンピュータ関係の雑誌や書籍も、もちろん99%はカスティージャ語なのです。OSがカタルーニャ語でも、現実に何かをしようとするとかなりの確率で、カスティージャ語を使用しないわけにはいかなくなるのです。

 MSインターネット・エクスプローラーにはカタルーニャ語版はあるのですが、最近ネットスケープ・ナビゲーター4.7がカタルーニャ語化されたので使っています。これはもちろん無料配布ソフトなのですが、簡単なスペルチェッカーがついていて重宝しています。これは本当に例外中の例外で、一般にパソコンの世界でカタルーニャ語にこだわるとお金が余計かかる上に、全くもって不便なことが多いのです。

 結局のところOSというものは、デスクトップ上が何語だって動き方は同じだし、言語の相違が問題となるところといえばワープロとしての使用のみだともいえます。でもそれはOSのレベルの問題というよりは、ソフトウェアのそれになります。だからよほど言語の使用にこだわりがあって、お金を余計に使う覚悟の上で目に見える文字を全部カタルーニャ語にしたいという人にだけ有効な、Windows95/98カタルーニャ語版の存在なのです。

 Macについては何もわからないのですが、Linuxの世界では初めてMandrakeというディストリビューションにカタルーニャ語版が登場しました。もっともLinuxとまじめに向き合うには、日本語版だって英語の文章を読みこなさなければいけないので、ほとんど意味はないとは思うのですが、世の中には何でもカタルーニャ語でないと気のすまない人がいることの証明なのです。

 

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