JOANのカタコト

 

4.ナンバープレート

 このほどスペインの車につけるナンバープレートのデザインが変更されました。変更点は2つあります。1つはナンバーのふり方が今までは地方の県単位だったのを、スペイン全部の通し番号にしたのです。前の4桁が数字で後ろ3桁がアルファベット という方法を採用して、例えば1234-BCDみたいになります。以前はバルセロナならB-1234-CUとかマドリードならM-1234-PPみたいに、最初のアルファベットでどこの車かだいたいわかるようになっていたのです。もう一点は、ナンバープレートの左端に幅4センチほどの青い部分が加わり、そこには上半分にEUの星のマークと下にスペインを意味する識別記号のEの字が描かれます。こういった方式はのEUの中でドイツやイタリアなどの国で既に採用されており、スペインもそれにならったわけです。 ここまでは何でもない話なのですが、実はカタルーニャ語圏ではこの新しいプレートの方式に強い反対運動がおこっています。たかが車のナンバープレートに、カタルーニャ人達はどうしてこだわるのかを見ていきます。

 まずカタルーニャ州では、いままでナンバーの最初の文字はバルセロナのB、ジロナのGI、タラゴナのT、リェィダのLが使われてきました。今回の改正では今後購入する新車からこれらの文字が廃止され、自分の車に乗るたびにスペインを意味するEの字のついたプレートを見なければいけなくなるのです。自分達の「くに」はスペインではなくカタルーニャだと思う、あるいはそう思いたい彼らにとって、このことは大きな苦痛になるのです。もちろん自分のIDカードにも免許証にもエスパーニャと書いてあるわけだし、車にそれが書かれたって何ら不思議なことではないのです。でも車のナンバープレートという毎日見ないわけにはいかない場所で、それを示されたくはないという、ちょっと複雑な希望なのです。

 ジロナでは長年GEという文字がナンバープレートに書かれていました。これはもちろん同地名がカスティージャ語名でヘロナ(Gerona)と呼ばれていた時代の産物です。フランコ時代が終わり地名もジロナ(Girona)に戻ったのに、あとに残ったGEの文字に強い反対運動がおこりました。運動者達はGIの文字が印刷されたステッカーをたくさん配り、ナンバープレートのGEの字の上に張りつけて中央政府への抗議の姿勢を示し続けました。この運動は成功して何年かしてGIの文字が正式な識別記号として認められ、今日ではGEを付けた車はもうほとんど走っていません。

 ところがそのせっかく獲得したGIの文字も、今回の改正ではゼロに戻ってしまうばかりか、一番見たくないEの字になっていしまうのです。ジロナの庶民も政治家もいち早く反応して、今回も反対運動をいいだしました。カタルーニャを意味するCATの字が入った青いステッカーを配って自分の車に貼ろうというもので、ジロナ市役所や消防署などの公用車にはすぐに貼り付けられました。過去の経験を生かし、戦いぬいてナンバープレートの文字を必ずや獲得しようともくろんでいます。

 ここでジロナの人々はGIの字ではなく、CATの字を獲得しようとしていることが注目されます。つまり彼らにとって問題なのは地域を示す記号が車に表示されることではなく、彼らの本当のアイデンティティーを車に書き示したいということなのです。それはつまりカタルーニャはスペインの1州ではなく1つの国として存在していることを表現したいという、民族主義運動そのものだともいえます。

 バルセロナでもジロナより少しだけ遅れて、CATのステッカーを貼る運動を開始しました。カタルーニャ州政府も警察をのぞく公用車に、CATのマークを貼ることに決めましたが、ナンバープレートには触れずに、その横の車体に貼るように指導しています。ナンバープレートに何かを貼ることは、道路交通法に違反することになり15,000ペセタの罰金をうける可能性があるので、役所としては奨励できないという苦しい立場のようです。それから公共交通の市バスとかにも、CATのマークがつけられるそうです。

 一方 ERCという民族主義政党は、Eの字の上にCATを貼らなければ意味がないとして、もしステッカーをナンバープレートに貼って罰金を受けた人は、罰金を政党の基金から払うという新聞広告をだして運動しています。するとその党のナンバー2の人の自家用車が警察に捕まり罰金を払わされたそうです。警察もその人の車だと知っていて、わざといやがらせをしたのでしょう。バルセロナ市長は警察に対して、この運動に対する理解を求め、この「改造」ナンバープレートを積極的取り締まりの対象から除外するように要請したのですが、効果はなかったようです。

 マスコミの中にも、カタルーニャ語紙 AVUIは日曜版の付録にステッカーを付録につけるなどして、運動に積極的に協力しているところもあります。

 この改正を決めたPP主導の中央政府では今のところ、プレートの問題は国会で議論するレベルのテーマではないとして、無視する姿勢を見せています。けれども、そのことがまたカタルーニャ人達の怒りを一層強めているのも否定できません。

 ということでカタルーニャ州では、ナンバープレート上にCATの字を獲得する運動として、自分達のアイデンティティーの確認・アピールをしているのです。

 一方バレアレス州では少し態度が違うようです。以前は4つの島でどこでもPM(Palma de Mallorca)という文字を識別に使っていたのですが、全バレアレス諸島を意味するIB(Illes Balears)のほうがふさわしいとして、ほんの数年前に変更する議決を州政府が全会一致で通したというできごとがありました。そのせっかく獲得したIBを失いたくないという点から、今回の改正に反対してIBのステッカーをはるキャンペーンを一部の 政党や文化団体が始めました。しかしバレアレスの人のアイデンティティーは複雑で、カタルーニャ語を話している人でも自分をスペイン人、カタルーニャ人、 マヨルカ人と思う人と様々なので、同じ運動なのにカタルーニャ州のような民族主義的昂揚はあまりありません。つまりナンバープレートに地域を示す記号を残す運動としての要素が、アイデンティティーの主張より大きいように感じられます。

 バレンシア州ではもっと規模が小さく、ごく少数の議席しか持たない民族主義政党だけがこの運動への共感を示し、CVの文字の入ったステッカーを貼ろうと主張していますが、一般の関心は極めて低いようです。

 こういったカタルーニャ語圏の足並みの乱れに対して、カタルーニャ語をしゃべる人はみなCATの文字を車につけて走ろうという呼びかけを、カタルーニャ語の最大のインターネットサイトVilawebというところがしているのを見つけましたが、今のところほとんど効果はないようです。

 

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