留学の秘訣教えます


2.ペラペラ神話をぶち壊せ!-留学期間と目的について(1)

さて、留学の大決心はついたところでなぜかひと安心−と、ここで問題になってくるのが留学期間となる。どのくらいスペイン滞在を予定するか、というのは予算の問題+目的で大体決まってくる-というある意味では単純なものなのだけれども、そこに
「せっかくヨーロッパにいることになるんだから、他の国も旅行したいし」 
という欲もでてくるし、
「できれば現地で仕事をみつけられたらラッキー」
という夢から
「現地でスペイン人の彼/彼女ができたりして」
などという妄想までも湧き上がってくる。


これらの思惑が渦巻く中、1つの決定的な疑問が生まれてくるのではないだろうか?その疑問とはずばり、
「どの位いたらスペイン語ペラペラになれるんだろう…。」
実はこの質問が留学生の方たちから受ける質問のナンバーワン。どの位したら、そしてどうやったら、"ペラペラ"になれるのか−ときらきらした目で聞かれたりするのだけれども、逆にここで私は聞いてみたい。「このペラペラってのはいったい何なんだ?」


そもそも外国語を"よどみがなく"、"流暢に話すさま"を表すんだろうが、曖昧な言葉である。「あの人ペラペラ!」と言われるための資格試験なんてものがあるわけでもない。 「クラスで私以外の欧米人はみんなペラペラなんです!」と泣きこんでくる人たちがよくいるけれども、本当なのか疑わしい。実際そのペラペラのクラスメートに会ってみると、会話レベルは初級も初級だったりする。もちろん英語、ラテン語のベースがある彼らは、私たちの1.5〜2倍は早い習得リズムを持っているけれども、それにしてもそのペラペラくんたちの喋っていることといえば、「昨日飲み過ぎて二日酔いです。」とか「私の国ではこれは食べません。」などという超初歩的なものなのである。


もう一つ例を挙げてみよう。現地滞在3ヶ月のあなたの所に日本の友達が旅行で遊びにやってきた。こちらのスペイン語レベルはまだトホホの状態であるものの、必死の思いでバスチケットの予約をしたり、レストランでオーダーをとってあげたりなんかしてあげていると、相手はあなたを尊敬の眼差しで見つめてこういうだろう。「すごーい! 3ヶ月でもうペラペラじゃん!」


…そう考えてみると、このペラペラという言葉の本当の意味は、広辞苑にあるように「外国語を達者に喋るさま」ではなく、本人の実際の実力は度外視した上で、「外国語を達者に喋るように見えるさま」ということであるのではないだろうか? こんな薄っぺらい意味の副詞をもとに築き上げられた、「ペラペラになんなきゃいけない強迫観念」なんぞに惑わされるなんて、それこそ時間とエネルギーのムダなんである。


さて、ここで本題に戻って留学期間について。まずは例のペラペラ神話をもとに、作られてしまった滞在期間に関するいくつかのウソを挙げておこう。

●3ヶ月も現地にいればペラペラになれる。
語学の習得スピードは個人差が大きいが、初の留学で3ヶ月滞在した時点での語学能力は、大体旅行で困らない程度。この3ヶ月は新しい環境に慣れるのに精一杯になってしまう人が多いし、それで充分じゃないんだろうか、とも思う。ムキになってガリ勉し、毎日目を三角にして通学するより、周りの環境の変化を大いに楽しむつもりで過ごそう。この最初の3ヶ月の経験が後々すごく役に立つのだから。

●現地に長くいればいるほどペラペラになれる。
というのもウソ。滞在10何年、カタコトでやってきたという人も多いのだ。というのも、語学能力がある程度のレベルまで達すると日常生活に困らなくなる。そうなると必要に迫られないので、その後自分で本を読んだり、文章を書く練習をしたりといった努力をしない限り、レベルアップはないのだ。

●学校に行かず、勉強しなくても、現地でネイティブと話しているうちにペラペラになる。
これはかなり信じている人が多いのだけれどもウソといっていい。ある程度の語学センスと時間があれば、「ペラペラに見える」までのレベルには達するのだけれども、基礎となる文法知識がないために、表現力が薄く、語彙力に乏しい。結局バールのウェイターとの気軽な会話はできるけれど、つっこんだ話ができない、という程度に留まってしまう。実際何百人に1人の割合で、学校も行かずに語学を完璧にマスターしてしまう人がいるけれど、話を聞いてみると読書量が違う。新聞から雑誌、話題の小説など、好奇心にまかせてどんどん読み、語学への知識を完成させてしまう能力のある人だったりするのである。やはりしゃべりだけでペラペラになる、というのは幻想。 反って回り道をしてしまわないよう、ある程度の基礎文法知識はしっかり学校で学ぶことをお勧めしたい。


ちょっとイタいコメントだっただろうか? けれどもこれらの思い込みが留学生活の第一歩をつまずかせる原因となっていることが結構多いのだ。そしてこの3つのことは、すべて「スペイン語がペラペラになる、またはペラペラに見えるようになること」という曖昧な希望が、留学の第一目的になってしまっていることから始まっているような気がする。


もういい加減、この「ペラペラ神話」がうち壊される時だろう。そしてコミュニケーションの道具としての、言語の重要性をしっかりと認識し(大体ペラペラっていう言葉には、軽薄なやっかみのようなものを感じる。きっとこの言葉を考え出したのは、外国語を習ったことがない人に違いない)、そのバックにある文化土壌に対する興味の深い追求が、海外留学の意義というか、大きな根っこのようなものと感じる人たちが増えていくことを期待しているのだけれども。そうなればきっと「語学のお勉強」というものに振り回されることなく、スペイン語で"自分の言葉"を持ち、会話を楽しむことができる人がもっと増えるはず-と思うのだが、どうだろうか?

 

後藤 美智子
留学の秘訣 《目次》 1.はじめに 3.ばかにできない短期留学


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