WRVのボランティア獣医として現場に赴き、今回の事故と救護の現場の惨状を目の当たりにした斎藤氏は、今回のプレステージ号の事故について、比類のない大規模な事故であり、湾岸戦争で油田破壊による汚染が行われたことを除外すれば、タンカーの事故としては、最大級の被害になるのではないか、と推測する。
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再び飛ぶためにプールでリハビリ中の鳥たち |
現場から斎藤氏が持ち帰った、重油の塊に触れさせてもらった。 何重にも包んだビニール袋を通してさえも鼻を突く刺激臭を放つ。 個体は、室内の常温にもかかわらず、異常に粘度が高く、手にこびりつくと、非常にねばねばした感触を残し、拭い去ることも困難だ。
海鳥救護の最前線、パトロールのSEOメンバーから集まってくる鳥たちのなかには、存命しているものや、上記の油の塊と混同さえしそうなほど油にまみれた鳥の死骸が連日集められている。
ウミガラス(Uria aalge)はスペインでちょうど繁殖期に入っていたところのコロニーを重油が襲う、という悲惨な結果に結びついたため、スペインでこの種は絶滅する危機にもさらされている。 ビゴの海洋研究所では汚染の影響で死亡したと推定されるイルカが数頭運び込まれ、またア・コルーニャの救護センターには不審な死因のキツネも運び込まれた。 解剖結果はまだ不明であるが、汚染された鳥を食べた可能性による死亡の可能性も存在している。現地でTVの報道を見ていた人の中には、打ち上げられた油の塊と見まがうほど、油まみれになったウミガメのショッキングな死骸の映像もまぶたに焼き付いているのではないだろうか。
鳥の被害が多く報道されているが、12月19日にSEOより発表された被害数は死亡、救護中を含め、4100羽あまり(12月15日までのデータ)。 確認されていないものも含めると、被害総数はこの1ヶ月で2万から4万羽に上ると推定される。 また、数年に渡り、繁殖力の低下などの現象も免れないなど、生態系に与える大きなダメージが心配される。
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