留学の秘訣教えます


6. 学校選びをはじめよう-学校の規模

「優秀な教師陣」、「アットホームな雰囲気」、「効率良い教育メソッド」…仕事柄、毎年数多くの語学学校パンフレットに目を通すが、正直なところ、10も20も読んでいると繰り返し出てくるフレーズに飽いてくる。これだけ似通ったパンフレットの中からこれ!というものを見つけろということ自体、かなり無理のある話だろう。優秀な教師陣だけど気が合わない、アットホームだけど生徒は全校私1人、効率良いメソッドの教科書類を何冊も買わされる、なんてことはちょっと意地悪な言い方だけれども、ありうることなのだ。パンフレットの宣伝文句すべてを鵜呑みにしないで、大雑把でもかまわないから、ちょっと分析をしてみよう。

前回述べた「日本人生徒数の多い、少ない」とは別に、かなり大きな決め手の1つとなるのが学校の規模だ。ここでも「小規模の方が家庭的で大規模校は事務的」とか「大規模の方がしっかりしていて、小規模校はいいかげん」という思い込みを簡単に持つ前に、ぜひ以下のことを知って欲しい。


●小規模校-"家庭的"であることの良し悪し

全校生徒が10人〜20人、常任教師が2〜5人、学校も建物の小ぶりなワンフロアーで玄関に小さな看板が貼り付けてあり、それでやっと「あ、なんだここか…」とたどりつくという感じの学校。授業の進み方はあくまでものんびりで、会話の時間はおしゃべりに花が咲く。授業以外にもあれこれと相談にのってくれ、月に一回のパーティーは持ち寄りのホームパーティー形式。仲良くなって担任の先生達と飲みに行ったり、コンサートにいったりなんてこともしばしば。

こんなところが小規模校の良さだろうか。思い切ってやってきた留学先で、こんなパーソナルな対応を受けるとほっとする。なおかつ大勢の中に埋もれていない分、授業での発言の機会も増えるだろうし、ゆったりした気分で勉強できることだろう。
この"家庭的"であることが裏目に出ることもある。
まずは事務管理に関すること。たいてい秘書1人がやっているのだが、この人が事務処理能力のない人だったりすると、学校自体は悪くなくても、もうそれだけで駄目だ。入学許可証送付、入金確認、宿泊施設の手配など一気に1人が背負っているため、ちょっとのミスでしょうもないトラブルに見舞われる可能性がある。これはパンフ請求の際に確認できることだろう。

1度アンダルシアのとある小さな学校に入学申込みをしたが、いつまでたっても返事が来ない、というケースを扱ったことがある。申込者は入学申込み確認書を書面で欲しいことを電話で告げると、なんと!「申し込み受けました、ありがとう!」とだけ太マジックで殴り書きされた便箋がファックスで届いてたまげたことがある。その後の校長の言い訳が「うちは家庭的な学校で…」…。太マジックと家庭的ということの関連性をぜひ知りたかったのだが。

授業に関すること。生徒数が少ないということはクラスメートも少ないということだが、これはかなり寂しい。まだ来たばかりの場所で、唯一共通の時間と話題を持てて、会話の練習ができるのはクラスメートなのだ。また前に述べたように全校で私1人、ということも冬季にはよくある話。入学時に何人位の生徒がいるのか聞くことも、ぜひお勧めする。コースの進度は確かにゆっくりで丁寧だが、その分物足りなさを感じる人もいるかもしれない。レベル数も少ないので、自分に合っていなくても変更が効かないことがあることも知っておきたい。

課外活動に関すること。これはまず無いと考えておいたほうがいいかもしれない。エクスカーションなどは希望があれば旅行会社を紹介してくれる程度だし、映画や文化講義などに関しても、希望があればやります、程度の話だ。そう考えると「言えばやってくれる」柔軟性があるのだから、どんどん希望をだしてもいいだろう。

そして最後に決して「家庭的だからといって安くはない」こと。料金設定は大規模校と変わらないし、課外活動がない、教科書代は自分持ちなどのことを考えればかえって高いとも言えるかもしれない。


●大規模校-規模と管理のバランスの見極め

夏季は全校生徒が数百人、常任教師が何十名、1つのビルが学校校舎でインターネットルームから図書館、視聴覚室など完備の言うことなしの設備。自校の発行する教科書を中心に、きちんとしたプログラムに沿って進む授業は活気があって賑やかだ。コースの種類も豊富で、そのほとんどが随時開講している。教務、宿泊、課外活動とそれぞれに管理部があり、生徒のクレームや希望には迅速に対処してくれる。毎日の課外活動が豊富、校内パーティーもディスコを借り切っての豪華版。安い値段でのエクスカーションも数多く準備している。いろんな国から来たクラスメート達と一緒に充実したプログラムをこなしていくことで、学校に行っている、という実感をもって楽しく過ごすことができるだろう。

大規模の場合、果たして学校の経営管理がその規模をカバーできているかどうかが、良し悪しのカギとなる。

事務管理に関しては分業制で行っているため、入学申込への迅速なレスポンス、クレーム、キャンセルに対するしっかりした対応など、ある程度きちんとしたものが期待できるだろう。

しかしこれはあくまでも傾向の話。事務管理担当の人数が生徒数をカバーできていない、担当者がくるくるかわる学校などはやはりトラブルがつきものだ。数百人の生徒がいながら、事務担当者が1人ないしは2人・・・何ていう学校が、信じられないが存在するのだ。この場合事務の流れがうまくいっている時はいいのだが、予想外のトラブルが発生した場合、お荷物として扱われることは避けられない。

また何の問題があるのか、担当者がよく代わる上に事務引継ぎゼロの学校で、迷惑を蒙るのはもちろん生徒側。随分前に支払ったコース料金を新しい担当者が「もらっていない」と言い張ってトラブルになったケースなど、実際にあるのだ。こんなタイプの学校の見極めはつきにくいが、せめて自分の参加コース、支払った料金に関しては人任せにしすぎないで管理しておく必要があるだろう。

きちんとしたプログラムをもとに進められる授業は、確かに文法理論を学ぶ上ではわかりやすい。しかし進み具合が早い、と感じても待ってはくれないので、取り残され感を感じる人もいるだろう。人数は1クラス10人前後と賑やかだが、それだけ頑張らないと発言権は廻ってこない。授業に限らず、人数が多い分だけ、言ったもん勝ち、顔を覚えられたもん勝ちの世界なのである。

大きな規模の学校だからこそ、入学時からの事務対応は厳しくチェックしたい。入学後も、事務的な対応ながらも、しっかりと生徒の希望を把握し、クレームに対応しているだろうかなど、よく見ておくべきだろう。



大きな学校がいいか、小さい学校がいいかの選択については、もう個人の好み、性格によるもの。長期滞在の方にはできれば途中で転校して、両方のタイプの学校に行くことをお勧めする。どちらもメリット、デメリットがあるのだから、それを知った上で双方のコースを体験し、おいしい所取りもできるのだ。どちらにしろ、その学校の良さと性格を早めに把握した上で、最大限に利用するつもりでコースに参加しよう。

後藤 美智子
留学の秘訣 《目次》 5.学校選びをはじめよう-日本人生徒の数って?


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