留学の秘訣教えます


5. 学校選びをはじめよう-日本人生徒の数って?

「とにかく日本人の少ない地方、いない学校がいいんですが。」
相談に来られた女性はきっぱりとした口調でまず切り出した。


「今いる学校は日本人が少ないと聞いてたけどやっぱりいるし、他の国のコ達も若くてわいわいみんなで騒いでいてついてけないし。日本人がいると固まって日本語で喋っちゃうからだめですね。あと家庭的で安いところ、あればお願いします。」…なんとなく心の中で"来たな"と呟いてしまった。「日本人がいない、家庭的、安い」というのは、日本人学生の好む学校の典型3ポイントなんである。


ちまたの留学ガイドブックに紹介されている学校の中で、日本人の生徒数の少ない、小規模の家庭的な学校にいざ入学してみると、1クラス5人全員が同じ目的で入ってきた日本人だった-なんて話はよく聞く。家庭的、安いというポイントについては次の機会にコメントするとして、なんでそんなにも日本人生徒数が重要視されるのか、そして果たしてそれは実際、どの程度各々の留学生活に影響するのか、考えてみよう。


●メリットとデメリット
現地に住んでいると、日本人の多い学校に通っている、というだけで「ああ、○○ね…」となんとなく微妙なニュアンスでいわれる、また反対に「学校では日本人私ひとり!」と自慢される-なんてことを経験したことはないだろうか。"日本人と固まっていると良くない"というのは、もう太古の昔から言われていることで、もうその通りなのだけれども、これもかなり極端な解釈をされているのではないだろうかとも思う。


その証拠に、いつも日本人同士で固まっていて、いったい何をしにきたのか分からない人がいる一方で、「絶対日本人と口を利きたがらないのに、いつまでたってもスペイン語がヘタな人」というのに何人も会ったことがある。この両極の例を見るたびに、結局バランスの問題なんじゃないかな−と感じる。環境が人を作るけれども、人がその環境の中でどう行動するか、の意志がまず大切なのだから。


それでも学校の日本人生徒数というのはまず気になるポイントだ。日本人の多い、少ないでどんな違いがあるのか見てみよう。


日本人生徒の割合が高い学校の利点は、まず学校側が日本人の習慣、性質、傾向その他に関して良く理解していることだろう。海外留学が初めての人にはお勧めしたい。噛んで含むように教えてくれる授業の進度ペースはゆっくりで、取り残されることもない。会話レッスンにもわかりやすいテーマを選んで、クラス全体均等に発言させるなどの工夫もする。ステイ先も日本人生徒の受け入れに慣れた家庭を選んだり、日常生活に関しても丁寧な対応をしてくれたりする。学校側は正にこちらの望んでいる受け入れ態勢を整えようとしてくれているのだ。


しかし一方でこのタイプの学校の欠点を挙げれば、やはりどうしてもクラスメートと日本語で喋ってしまうことだろう。休憩時間、午後の自由時間、すべてが日本人同士の日本語の会話で終わってしまって、これは楽かもしれないけれど、いつまでたってもスペイン語でコミュニケーションする力がつかない。また学校の親切丁寧な対応に慣れてしまい、学校以外の場所での"サバイバル力"がつかなくなって混乱してしまうだろう。


一方日本人の少ない学校ではこんなことはまずない。スペイン語でのコミュニケーション力無しでは授業中はおろか、課外活動でも支障をきたしてしまうために、まずは必死にスペイン語で喋ろうとする姿勢が出てくるはずだ。欧米の生徒らに囲まれているうちに、アタマの中にあった「外人と日本人」という垣根が外れて、より幅の広い視野が生まれてくるはず。会話の授業の中でも、そのテーマの広さ、考え方の違いに改めて文化の違いの面白さを発見するかもしれない。


一方欠点を挙げれば、このタイプの学校が授業の構成、進め方からして大多数の欧米人生徒を対象としたものであること。授業の進度はどんなにこちらが頑張っても速い。それでいてコース開始時には自分より喋れなかった他の生徒が、1カ月後には流暢に喋りだし、すっかり取り残されていることに悔しい思いをする。


会話では「死刑制度の是非」とか「環境問題」などかなり高度、なおかつ具体的なテーマが選ばれ、さらに言ったもん勝ちの激しい討論形式についていけない。おまけに課外では英語が共通語のことも多く、最終的にはすっかり無口な日本人として参加している自分の姿にがっくりする。


強調したいのは、以上挙げたことはあくまでも傾向であるということ。しかしちまたで言われる「日本人の少ない学校の方が良い」というのは頭から信用しない方がいい。実際日本人の多い学校に通ってDELE試験のSUPERIORに一発合格した人もいるし、日本人のいない学校でまったく会話力の伸びない人もいる。最初に述べたように、環境を良く知って、それをどのように利用するか、個人の意志の問題なのだ。


さて、冒頭に出てきた女性はどうなったかというと、結局お勧めした学校も「小さすぎて」辞めてしまい、その後ひっきりなしの転校と引越しに明け暮れているうちに帰国日が来てしまったという、なんとももったいない話で終わってしまったのだった。


後藤 美智子
留学の秘訣 《目次》 4.学校選びをはじめよう-まずは地方選び


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