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留学生活のぞき穴 |
| 第5回(最終回) グラナダ大学・大解剖−外国人コース編 |
HOLA AMIGOS!
長い夏の終わりを皆さん楽しんでいますか?
実は6月にスペイン留学を終え日本へと帰国し、もう3ヶ月も経ってしまった。 帰国と同時に始めた就職活動に押されて、こんなに第5回が遅れてしまって、ごめんなさい。 厳しい日本の就職活動中も、スペインでの日々を思い出すと、いつでも顔がふにゃっと穏やかになった。 スペインの匂いもリズムも遠くなってしまったから、懐かしさが混じってなおさら大事に思えた。 私の人生に最高の経験をくれたグラナダとも、大学とも、友だちとも一時のお別れ。 最終回の今回は、この留学のメインであった、グラナダ大・外国人コースを振り返ってみたい。
グラナダ大学の外国人コースには、1ヶ月からの語学インテンシブコース(第3回で紹介)や、スペイン語初級者のためのスペイン文化コースもあるが、最も充実していてレベルも高いのが、ヒスパニック・スタディーズ(Estudios Hispa'nicos)である。 スペインと中南米のスペイン語圏諸国に関して、政治・経済・社会・文化・言語など、さまざまな分野の講義をグラナダ大学の教授たち(スペイン人の学生に教えている教授たち)が教えてくれる、という本格的なものだ。 生徒はもちろんみんなスペイン語学習者だが、授業は割と専門的な内容で、全て100%スペイン語で行われる。授業の難易はその授業によってかなり幅がある。
◆私のスケジュール例(2学期目)
月水:17:00〜18:30 中南米現代史
火木: 8:30〜10:00 スペイン文学、10:00〜11:30 スペイン現代社会、
11:30〜1:00 翻訳、18:30〜20:00 南米文学
金 :なし
・中南米現代史(独立〜現在)
中南米のスペイン語圏諸国の独立から現代までを駆け足で学ぶクラス。 高校の歴史の授業で学んだ程度の知識しかなかった私には、なかなか難しかった。 まず、歴史に出てくる用語が全て分からない。 Realistaと聞いて、「え?何でいきなりリアリズムなの??(美術や文学の)」という始末。(実際は、王党派という意味) でも、質問すればその分返してくれる教授だったから、疑問はその都度解決できる。 ただ、かなりの広範囲だったので、中南米史のパノラマをざっと追うという程度だと考えた方がいい。 試験は筆記形式で(それがスペインでは主流のようだ)、一言「メキシコ革命について」などと聞かれて、A4一枚くらい自分が知っていることを全て書く。
・スペイン文学(ルネッサンス、バロック)
3つあるスペイン文学クラスのうちの一つ。 スペイン古典文学を原書を読みながら学んでいく。 古いタイプの教授で、ひたすら彼女の講義を生徒が聞く。 あまり板書もなく、プリントや映像資料もなく、学生はノート取りに必死。 中間・期末テストのみで評価。 この先生に対する評価は学生によってまちまち。 ちゃんと文学を理論と共に教えてくれるから、私はためになったな、と思う。 でもエンターテイメント的な要素がゼロだから、寝ちゃうしつまらなすぎる、、というのが一般的な意見だった。 私としては、セルバンテスなど古典はこういう古風な先生にしっかり習った方がいいんじゃないか、と思う。 現代文学だったら自分の解釈に重きをおいて、議論中心でもいいけれど。
・中南米文学
上記のスペイン文学の先生とは逆のタイプの先生。 文学は教えるものではなく、みんなが考えるものだから、試験もやらないし、授業も講義形式ではなく、学生同士のディスカッションを中心に、という考え方の先生だった。 確かに、その考え方に基本的には賛成だ。 でも、文学が専門でもない私たちが、外国語で難解な詩や小説を読み、学んでいる。 だから、まず基本的な理解のために、先生が基礎知識を講義してくれないと議論が始まらないなぁ…と思った。 授業がはじまったら、先生は「みんな読んで来た?どんな意見がある?」というだけ。 でも、中南米文学がすごく魅力的だな、と肌で感じられた。 ドキュメンタリービデオを持ってきてくれたり、詩の朗読CDを聞かせてくれたり。 評価は期末レポートとプレゼンで行われる。 レポートはA4で4枚以上、テーマや形式は自由。私はガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」について書いた。
・英語→スペイン語翻訳
この授業が一番おもしろかったし、自分もかなり積極的に取り組んだし、ためになった! まわりは英語ネイティブばかりという中だったけど、逆に私には英語の勉強にもなったし一石二鳥。観光情報・文化情報・新聞・文学・科学的文章という 5つの種類の翻訳を実践的に学ぶ。 毎授業、自分の翻訳を用意していかないといけないから、宿題量は多いが、翻訳好きな人なら、時間を忘れて熱中できると思う。 教授は実際に翻訳の仕事をしてる、グラナダ大学のスペイン語の先生だから、文法や語彙に関する説明も抜群!
・スペイン現代政治社会
今までで一番簡単だった授業。 学生も一番多かった。 若い女性の先生で、叫ぶように話すし、元気はつらつとしているから、授業で眠くなったことが一度もない。 スペインの社会問題をひとつひとつ丁寧に説明してくれた。 独学できるような内容ではあったものの、まとめて体系的に教えてくれたから、助かった。 王政、政治の仕組み、ETA、家族、教育、政治文化。ちょうど総選挙と3/11テロがあったため、授業でも大きく取り上げてくれて、自分でメディアから得る以上のことを学べた。
・その他
翻訳のクラスは本当は月曜だったのだが、月曜は朝から学部(スペイン人大学生たちのクラス)へ聴講に行っていたので火曜日に変更してもらった。 ・・・しかし、学部までバスを使って、家から30分以上かかるため、途中で断念。 でも、学部のクラスに遊びに行くのはとても楽しいからオススメ! みんなA4の真っ白い紙(印刷用紙みたいなもの)にひたすら教授の言うことのノート取りをしていた。 私は、授業内容を聞き取れて、ほぼ理解できても、あんなに早くノート取れないなぁ・・・、と彼らの書くスピードに圧倒されていた。 やはり、アルファベットを書くスピードは欧米人に負けるなぁ、といつも思う。
授業の他には、インテルカンビオ(日本語を習っているスペイン人と日本語・スペイン語をお互いに教えあう)をやっていた。 スペイン人女の子2人と週2回インテルカンビオし、毎週末家に遊びに行っては、一緒に日本のドラマ(インターネットでダウンロードしたもの)を見ていた。 その他に、アメリカ人の友人とも英語・日本語のインテルカンビオを週2回、もう一人スペイン人の友人とも週1回・・・と、インテルカンビオの相手には困ったことがない。 スペイン人女の子2人とは、学校のインテルカンビオ登録で知り合った。 彼女たちが初めてのスペイン人の親友である。 特にスペイン人の女の子とはそれまで「友達」と呼べるほど仲良くなる機会も少なく、スペイン女子は遠いなぁ・・・と思っていたけれど、彼女たちとはとても仲良しになれた。 ちなみに、2人ともこの夏、日本に短期留学で来ていた。
授業以外では、フラメンコレッスン(グラナダ在住日本人バイラオーラ、最高の先生!)、大学の演劇クラブ、絵画クラスなど、色々なところに顔を出していたら、自然と友達の輪も広がっていった。 学校だけだと留学生ばかりなので、学校とは関係ないコミュニティに属してみると、一気に世界は広がる。 特に、スペイン人一人とすごく親しくなると、その友達、その友達の友達…と、芋づる形式で広がっていく。
これ以外に、DELEの準備コースを取っていたときは、月〜金で夜8時〜10時の2時間毎日授業があった。 それは2週間だけのコースだったが、Estudios Hispa'nicosに加えてその2時間、そしてDELEのために自分でも勉強をしていたので、頭は破裂寸前だった・・・。 でも、その甲斐があり、念願のDELE(SUPERIOR)に合格できたので、グラナダ大学に感謝感謝。
◆Adio's、スペイン!
空港で、インテルカンビオの友達がプレゼントしてくれた La Oreja de Van Gogh のライブCDを聞いた。 そしたら、不意に涙の波がどっときた。 それまでケロっとしていたのに。 しかもグラナダを出た瞬間から、もう自分の思い入れのある風景から遠ざかっていたし、空港なんて最も感情移入のしにくい空間。 それなのに、いつもどこかで耳にしていたあの音楽を聴いて、急にグラナダでの日々がどっと津波のように押し寄せてきて、目頭が熱くなった。 ああ楽しかったな、ああ私がんばったな、ああいい友達がたくさんできたな、ああ私のスペイン留学も終わってしまうんだな、といろいろな感情がよぎった。 悲しいという感情とはまた違うんだけど、でも切ない。 そして、その時に思った。 ああ、この音楽があるからいつでもグラナダで感じていた、あの空気を一秒で呼び戻してくれるんだな、と。
日本に戻ると、スペインでのことが夢だったかのように感じる。 成田空港に着き、現実と正面衝突して頭が真っ白になった。 そして、恋人や家族と会うと、もう昨日もおとといも一緒にいたような気分にさえなる。 私がスペインにいたこと、したこと、感じたこと、それは夢だったの?? でも、違う。 実際スペイン語は上達しているし、ここにこのCDがあるし、スペインの友達からメールが届く。 夢ではないんだ。
夢ではないことが分かっていても、あの感覚はどこかへ行ってしまう。 日本にいて、スペインパワーが欠けたなと思うときは、この音楽を聴こう。そして、思いっきりスペイン語を話そう。 そしたらきっと、私の中のスペイン魂がよみがえる。
現在は就職して2ヶ月目。 ポルトガル語とスペイン語の新聞社で働いている。 念願の「スペイン語就職」ができたけれど、ゴールじゃない。 これからが本当のスタートなんだ。
グラナダからのバスの中で、スペイン留学最大の親友と二人で語り合った夢や希望は絶対にあせないで欲しい。 スペインがくれた、グラナダがくれた豊かな気持ちは、私の中でずっと生きつづけて欲しい。
これからスペインを目指す人、留学中の人、卒業した人。
みんなへエールをこめて。
<おわり>
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● プロフィール
今泉陽子
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、グラナダ大学Estudios Hispa'nicos(外国人コース)に留学中。趣味は写真、フラメンコ、サルサ、茶の湯。詩が好きで、ロルカを追い求めてグラナダへ。「日本とスペインの架け橋」なるものを目指し、日々修行中。
文通しましょう → yoyofeliz@nifty.com
(写真)アルハンブラ宮殿を背景に
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