ちょっと前のわたしたち

【No.236】9月7日 Sara * 【No.237】9月13日 かおる
【No.238】9月20日 むく* 【No.239】9月27日 Taka

No.239

9月27日 Taka(東京)

  秋がやってきた。虫の声を聴きながら月見をしたり、映画をみたり。 のんびりと暮らしている。 友達が次から次へとスペインへ旅立つのを見送り、これまでのように、いいな〜と指をくわえるわけでもなく、なんとなく自分の居場所で静かに暮らしている。

 たまにはふらりと近所にあるスペインバールに立ち寄り、馴染みの顔を見ながらホッと一息つく。 キューバに行きたい、スペインに行きたいと騒がなくなった自分をハテナと疑問視しながらも、落ち着ききった暮らしのなかで静か〜に季節のうつろいを感じていた。 そんななか、友人がやっているバルで起こった事件? の話を聞いて、久しぶりに憤慨ッ!

 話によると、いい歳をしたおやじ3人組が店にやってきてワインを飲み始めたらしい。 しかし、その飲み方ときたらひどかったとか。

「ここってスペインバールとかいってるけど、なんでこんなワインしか置いてないの?」
「こんなの、スペイン行ったらテーブルワインじゃない?」
「もっと高くて、もっとちゃんとしたいいワインがあるんじゃないの?」

  と。 店は、こじんまりとしているが、スペインの小さな村の小さなBarの雰囲気をかもし出していて、料理もおいしく、ワインもちゃんと吟味されている。 もちろん、ン万円もするようなものは置いてないが、安いなかでも味わい深いものが置いてあるのが、私などには嬉しいところだ。

 しかし、彼らはどうも気に入らなかったらしい。かつてスペインに10年間住んでいたというリーダー格は、いつまでもいつまでも友人(オーナー)に文句を言っていたとか。 その態度にさすがの友人も頭にきて、静かにアドバイスをした。

「それならウチではなく他の店に行かれた方がよろしいんじゃないですか」

 しかし、彼らは懲りなかった。 こんどは別の客をつかまえて、
「君たちさあ、スペインにはもっと美味しいワインがあるんだけどな〜。 そんなの飲んでたらダメだよ、もっと本当に美味しいワインを飲まないとね〜」

  と、説教を始めたというのだ。
  彼らは大のスペイン好きらしいが、そんな奴らがスペイン好きだと〜? と、私も話を聞いているうちに怒りが爆発。 次第に悲しみにかわってきた。 ところが、そんな彼らの態度はまだ序の口だった。

 しばらくして3人組のうちの1人が店を出て行き、しかしすぐに戻ってきたとか。
その手には、なんとワインのボトルをさげて!

「いや〜よかった、あの店が開いてたよ。これで、やっとうまいワインが飲める!」

  と。 どうやらすぐ近くにあった某有名イタリアンレストランから、いわゆる高級とされるワインを1本売ってもらってきたというのだ。 しかもそれを店で飲んだんだと!

 世の中には本当にいろんな人がいる。

「スペイン好きって激しい人、多いの?」

  その場に居合わせていたという他の客の呟きに私も思わず、うーん、と唸ってしまった。

 

No.238

9月20日 むく(マドリード)

  最近、日本からのニュースに接するたびに不思議に思うことがたびたびある。 個人的な意見を踏まえてそれらを列記してみたい。

小泉首相は、郵政民営化法案が参院で否決された場合には衆院を解散して法案に対する民意を問うと明言していた。 いざそうなってみると法案に反対した人間は「小泉首相は横暴だ、独裁者だ」などと言う。

 不思議だ。 郵政民営化に対する賛否を総選挙のテーマにするのはおかしいなどとも言う。 これも不思議なことである。 法案に対する民意を問うと言って衆院を解散したのであるから、郵政民営化を総選挙のテーマに揚げるの当然であろう。 国民が郵政民営化に対する賛意を表明したといってよい結果になった。喜ばしいことである。

 選挙に関して今日読んだインターネットのニュースで「在外邦人の選挙権制限は違憲・最高裁大法廷判決」という記事があった。 不思議な判決である。 過去、海外居住者は日本国内の選挙に対する投票資格は一切なく、現在は衆参両院の比例代表選挙に限っては投票できるが、選挙区選挙の投票はできない。 当然のことだと思っている。 なぜなら海外居住者は住民税を払っていないのだから。 住民でないのに選挙権だけはよこせと主張しているのである。権利だけ主張しているである。 選挙権をよこせと言うのであれば、住民税を払ってから言えばよい。

 先日衛星放送で、ご近所の知恵を借りて痴漢に対する予防、撃退を行うという番組を見た。 この痴漢という行為は日本人独特の卑劣な行為であり、許せるものではない。 日本人の国民性の問題であろう。 これは泥酔者に対する寛大な国民性、赤面を覚える行為を団体での海外旅行で平気で行なっている国民性などにも通じるものがある。

 幼児を車中に残し夫婦でパチンコに興じている間に幼児が死亡という記事。 自分で生んだ(生ませた)子どもを虐待し、死に至らしめる。 こういう無責任な夫婦に子どもを育てる資格なし。

 日本の消費税は5%。 この消費税を上げることには絶対反対という立場の国会議員が多い。 これも不思議なことである。先進国の(消費税に相当する)付加価値税でこんな安い率の国はない。 ヨーロッパでは20%程度の付加価値税が普通であり、贅沢品に対しては33%もの付加価値税を徴収している国もある。 日本の物価が高いのは構造的な問題であり、消費税の増額が物価上昇に結びつくというのは一見正しいようで論点が違っている。 日本の物価全体を下げるような構造改革が必要であろう。

 止まらなくなりそうなのでこのあたりで止めておこう。 次回は楽しい発言にしたいものである。

 

No.237

9月13日 かおる(マドリード)

 実に久しぶりに美容院へ行った。
  日本にいたころは大の美容院好きだった私もこちらの美容院はいまだ苦手。

 「気持ちよくない」のと「不便」でついつい好きだった美容院から足が遠のく。
  「気持ちよくない」の理由のトップはなんといっても「シャンプー」。

 日本の美容院ではシャンプーは丁寧でちょっとした頭髪マッサージみたいな感覚。 人に髪を洗ってもらうということは、それは気持ちがよかった。 それが!こちらでは、シャンプー台は私にとっては少々の拷問だ。 そのシャンプー台。 陶器製でとにかく冷たく硬い。 そこにぐいっと首を後ろに傾けて頭髪を洗ってもらうことになる。 首の付け根が痛くなるし、時には水が台のふちを伝って服を濡らす。 髪染めしたときは着ていた服を少し染められたことも。 ショートカットの髪の切りはしを洗い流すときに思いっきり耳に水を(髪の切った屑と一緒に)入れられて中耳炎になりかけたこともある。 なにせ不快度が高い。

 そして「不便」のトップは「時間」。 日曜日に美容院が休みというのは非常に不便。 仕方なく土曜日に行こうとしても日曜日のお出かけに髪を整える方々で満室が多い。普段の日は仕事を終えて帰ってくると美容院は閉まりかけているか、完全に閉まっている。

 上に書いた理由のほかにも気に入ったカットをしてくれる、日本でお気に入りだったときのように、したい髪形、なりたい髪型のコンセプトをちゃんと聞いて、顔と髪質に似合ったカットを入れてくれる美容師さんにめぐり合っていない、ということも一つの理由かもしれない。 東洋人の髪質や顔に慣れていないのだから仕方がないかもしれないが、一度など、パーマを当てたとき「ゆるくね」と言ったにもかかわらず、頭が倍ほどになるようなカーリーに仕上げられたことも。 お店の人は至極満足で「まぁ、素敵に仕上がったわ」と言ってくれたが、自分の姿がガラスなどに映ると、頭が歩いているような自分の姿に正直しばらくげんなりしたものだった。

 前置きが長くなったが、そんなわけで美容院ともしばらくご無沙汰だった。 で、ついに我慢できず先日は美容院へ。 オリジナルでちょっと違った雰囲気でちょっと気になっていたところに足を運んでみた。 いきなり受付で対応してくれたのは、人目ではっきりとゲイとわかるおじさん。 カットを担当するのもまぁ、こちらのゲイのタレントさんにあるような「らしさ」を振りまいているお兄さん。 ふーん、彼らの美意識が出ている美容院なのかな、と少し興味がわく。 相談して髪染めとカットをお願いすることに。

 4、5ヶ月の美容院ご無沙汰の間にどうしようもないところを自分でカットしたりしていたのを(当然だが)見破られ、叱りを受けたり、変な癖を戒められたり。 なぜだかわからないが、ゲイの人たちというのは往々にしてこのあたりのさじ加減が非常にうまい。 普通に言うと「とげ」があったり、傷つきそうな言葉を遠慮なく浴びせる。 が、その割にそこから受けるダメージは少ない。 かくして、このゲイのお兄さんにカットされた私は「お店に来たときはとんでもない髪形。まとまるわけ無い髪型!」という状態から「別人みたい、素敵!」とお店から送り出してもらえた。

 毒舌に慣れるまで少々忍耐が必要かもしれないが、まぁ、通える美容室としてのレベルは獲得。 しかも、カットだけなら夜の8時半まで受け付けるという。 しかし、シャンプー台の問題は残留中。 だれかよいシャンプー台、スペインに普及させてくれないかしら。

      

 

 

No.236

9月7日 Sara(グラナダ)

■夏のフラメンコ IN GRANADA

 今年のグラナダの夏はきつかった。強烈に乾いた暑さだった。 雨が降らなかった。そして、未だに降らない...
  一応、2週間お休みを頂いたが、先立つものも乏しいので特に何所にも行かずぶらぶらしていた。 幸いグラナダは海まで車で40分と近いので、気が向いたら、日帰りで海に行ってはイワシ焼きを食べて帰ってくるという気ままな生活を送った。

 さて、たまにはフラメンコを離れて他のことも書こうと思いましたが、いざ書こうと思うとフラメンコの事が頭の中心から離れません。 本業だから仕方ないですね。(笑)
  グラナダは、夏はフラメンコの企画が多いです。アンダルシア特有の中庭、パティオに設置された野外会場でのフラメンココンサートシリーズは、夏中企画されているし、アルハンブラ内のカルロス5世宮殿の中庭に設置された舞台も毎年詩人ガルシア・ロルカをテーマにしたフラメンコの作品が2ヶ月間に渡って公演されます。 その中のいくつかの作品や、舞踊家について書いてみたいと思います。

■作品名 DIALOGO DEL AMARGO マリオ・マジャ監督

 これが、アルハンブラ内のカルロス5世宮殿で今年2ヶ月間に渡って公演された作品です。 グラナダの詩人ガルシア・ロルカのテーマは比較的簡単ではない。ジェルマの作品のように、不妊の女性の苦しみをテーマにしたものや、今年のディアロゴ・デル・アマルゴは人間は生まれた瞬間から死が約束されている、愛とは、その束の間の夢。というのが大筋のテーマです。

 普通の監督さんがそれを舞台芸術として表現しようとしても、大抵は暗い、を通り越して、おどろおどろしくもなってしまうものが、マリオ先生は、逆にそのはかない愛の美しさを美しく表現し、でもやっぱり死はやってくるんですよ、と、人間の宿命そのものも伝えていて、うーん、やはり只者ではなかった。

 特筆することは、先ずはそのマリオ先生の舞踊家としての才能の他に、(この作品ではマリオ・マジャは舞踊家としては登場しません)舞台監督としての才能である。 当を得た音楽も大筋はやはり彼が仕切った。 舞踊団は、監督にとっては不足の部分もあっただろう、とこれは私の想像。 主役のフアン・アンドレス・マジャとディエゴ・ジョリを除いてはである。

 この作品は、スポンサーがグラナダ市といってもいいくらいのものだし、なんせ2ヶ月間ぶっ通しの公演なのでグラナダのアーティストをほとんど使って頂いたという訳である。彼がもっと大掛かりな予算で好きなように配役したらもっとすごいことになるのだろう。

 作品は1部がフラメンコ舞踊。2部がディアロゴ・デル・アマルゴの作品という2部構成。 1部では、新しい舞踊技術を目立たないように取り入れながらも、本来のフラメンコ舞踊の美しさとエレガントさが滲み出る振り付けになっており、私はかなり斜めの位置から舞台を見なくてはいけなかったにもかかわらず、舞台構成や振り付けが良くわかったのには驚きました。

 特にマリオ先生が過去から踊っている男性舞踊の力強さと美しさに関しては、古くから使われているステップに関しても新鮮に見せてしまう粋さだった。 男性達は昔からの伝統の腰の位置の高いズボンに短めの丈のジャケットを羽織ったスタイルで踊った。
  2部での作品では、先に書いたように先ずは作品としての完成度の高さ。 そして、アマルゴを演じたファン・アンドレス・マジャはマリオ・マジャ、つまりは、マジャ家伝統の踊りを見事に踊りきると共に、役にも上手く入りこんでいた。 必見は、死のイメージの役を演じたディエゴ・ジョリである。 この方はマドリードでもいろいろなところで見て関心していたが、今回のこの役では本当に驚いた。

 そして、その全体の力に引っ張られるように、グラナダのアーティスト達もそれぞれが光っていた。 その個性を光らせるのも監督の力なのだろう。 練習は途中で水も飲みにいけないほど厳しいもので脱落者も沢山いた。 でも、その成果、ここに有り、である。

 これはオマケの話だが、今までこのアルハンブラ宮殿企画は素敵なのだが、なんせ宮殿の中なもので、バルが無いのが地元の人には辛かった。 1時間半とか2時間という公演時間中、スペイン生活に慣れた私達には休憩時間にバルが無いというのは非常に酷なことなのである。 ところが! 今年に関しては、なんとバルが有るのである! 私は本当に目を疑った! さりげなく白いテーブルクロスがかかったテーブルが庭においてあり、カナッペなどが注文できるのである。ガムやチョコレートは売っていない! なんてエレガント!!

 アルハンブラ宮殿内にバルを作ってしまったのはマリオ先生がきっと初めで最後。 “バルにマイクロウエーブまであるぜ”と感心する旦那の一言には笑った。 いままでは、我が家でマリオ・マジャは失礼ながら呼びつけだった。 しかし、その夜から“セニョール・マリオ”になった。 そして永遠に...

■ふわふわブレリア SORAYA CLAVIJO

 ソラジャ・クラビホ。 セビージャとパンフレットにあるが、今、住んでいるのがセビージャであって、ヘレス出身で間違いなかろう。 若手の踊り手には珍しくテクニックに頼り過ぎず、自分のやりたい踊り、自分の出来る踊り、自分のキャパを良く知ってる人だなと感心した。

 コンクール向きの踊り手でもないのに、コルドバのコンクールでふわふわしたブレリアを踊って賞をもらったのが彼女なのだ。 私はその授賞式の時の不思議な存在が忘れられず生で見たいと思っていたのだ。 凡人が早く自分の才能を見つけて、可能な限りそれを磨いて光った感じだった。 とにかく好感が持てた。そしてその踊りには、普通ながらもヘレスの人のこだわりと、ヘレスの古いジプシー女性の踊りのスタイルも垣間見ることができるのだった。

 特筆するのは、一緒のメンバーでやってきたホセリート・フェルナンデスの渋い応援の踊りと手拍子。 そして、その父、クーロ・フェルナンデスの踊りをしっかり支えてくれる古いフラメンコの人の歌でしょう。

■空手フラメンコ ファルーコとバルージョ

 ファルーコとは、あの伝説の踊り手ファルーコの孫、ファルキートの弟と、バルージョはそのプリモ、親戚の子、つまり、ファルーコ一家グラナダ参上という訳である。 今、なにかと話題のフラメンコ界のプリンシペ、ファルキート様の弟という訳で、当日の入場券は売り切れでも欲しがるファンで大騒ぎでした。 オマケに、そのファンの層というのが、グラナダ市、または、グラナダ近辺のジプシーの多い村からジプシーの女性達が全身水玉で押しかけたからすごい。 手拍子と歌が鳴り止まない。 ファルーコ一家特有のスピード感のある踊りが決まるたびに黄色い声援が飛びまくった。

 私は最初から覚悟はしていたが、すでに真面目に舞台を見るのはあきらめ、どこまで空手フラメンコを見せてくれるかというのと、村のジプシーおねーちゃん達の反応を見て楽しむことにした。

 ファルキートが一緒に来ているに決まっている。 だから「ファルキートにさわる」というのが彼女達の目的である。 彼女らの予想は見事に当たり、弟達に掛け声をかけるファルキートの声に反応して会場はざわつきまくった。 耳の良いねーちゃん達である。 2階席からファルキートは会場に手を振るといったサービスぶりだった。

 楽しんでコンサートは終わった。 「ファルーコ一家ここにあり」を見せたのは流石でした。 終了してからも、ファルーコ一家の行く先々にジプシーねーちゃんの行列が後を絶たなかった。(笑)

■スマートな実力舞踊家 メルセデス・ルイス

 流石2年連続で由緒有るコルドバのコンクールで優勝した女性だ。 テクニック抜群、表現力抜群、しかもさわやかな華もあるし、独特な世界も持っている。 スタイルも衣装のセンスも自分に合ったものを選んでスマート。 新しい舞踊技術がそれでもかなり目立ってしまうが、これはもう好みの問題だろう。 1時間の持ち時間の中で3曲フルに踊って、1曲はバタ・デ・コラのアレグリアスも見せてくれた。(長ーーいスカートで踊り、特別な技術が必要)

 一番関心したのが、足音。早いスピードでもうるさい音は一つも出さなかった。 これも、流石ヘレス人ここにあり、を見せてくれた。 ここでの特筆は、やはりヘレスの歌い手、エル・ロンドロが良かった。 声の筆を2、3種類変えて歌うのには関心した。 古いものも、新しいものもなんでも来い、という感じで安定していた。 正調、マノロ・カラコル節を美しく歌ったのは忘れられない。

■フラメンコ知恵熱。

 という訳で、いろいろ見て、最後の方は情報が多すぎたのか、夏バテなのか、1日中知恵熱がでてしまった。 体力回復にうなぎが食べたくなったが、グラナダではうなぎなんて手に入らないし、日本食レストランも無い。 しかたなく、アイスを食べて、寝て治ったのだから、知恵熱だろう。 
  あとは、これをバネに芸術の秋は、練習、練習、練習...

           さよなら、さよなら、さようなら。

      

 

 

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