ちょっと前のわたしたち

【No.181】5月3日 かおる * 【No.182】5月10日 Taka
【No.183】5月18日 Mehce * 【No.184】5月24日 むく
【No.185】5月31日 Maki

No.185
5月31日 Maki(横浜)

 ついさっき、TVで「ウルルン滞在記」を見ていた。ご存知の方も多いと思うが、これは芸能人が1週間、様々な外国に滞在して様々な生活をする番組だ。今日はポルトガルの古い山間の村だった。スペインに似た風景、スペイン人に似た人々、スペイン語に似た言葉・・・ポルトガルには行ったことがないのに、なぜか懐かしさを感じてしまった。

 昔はこの番組が大好きで、スペインロケの時なんかもう欠かさずに見ていたものだった。でも、実はこの番組をまともに見るのはものすごく久し振りだった。今日も見ようと思って見たわけではなく、母が見始めた時にたまたま同じ部屋にいたのでそのまま見ていたというのが実情。思えば、スペイン滞在から3年ちょっと経つけれど、帰国してからはあまり見なくなってしまったのだ。それはなぜか?自分でも「なんで見なくなっちゃったんだろう?」と思ったりする。もちろん色々と忙しくてTVを見る暇がないというのもあるんだけど、それでもほかに見ている番組もあるわけだから。これには、思い当たる大きな理由が1つある。

 それは、恥ずかしいけど、見ているとうらやましくて悔しいから。色々事情があってスペインを再訪できないままの自分が。そして、毎回毎回番組の最後に、たった1週間しか滞在せず、通訳を介して会話をしていたその芸能人が滞在先の大勢の人に見送られて涙ボロボロでお別れするのが。

 ぶっちゃけて話してしまうと、私は、スペインでは首都マドリードに住んだ後に田舎の村に何ヶ月も滞在していた。でも、日本に帰国する際にその村を出てマドリードに向かうとき、1人の村の友人に頼み込んでマドリードまで車で送ってもらった。その友人もほかに用事があったのに、荷物がたくさんあった上にどうしてもその日に移動しなければならず、しかもほかに頼める人がいなかった私は、空き時間に合わせるから、と言って無理に頼んだのだった。

 だから全然ほかの人とゆっくりお別れができなかった。私が日本に帰ってしまうということを、ごく親しい友人以外、村人たちは誰も特別に気にかけていなかった、ほとんど知らなかったというのが正しいのかもしれない。知っていた友人たちすら、特別に見送りをしてくれたわけでもないし、お別れ会を開いてくれたわけでもない。その辺はサバサバしていたというのが実情かも。一緒に住んでいたおばあさんが旅行中だったのだけど、その帰りすら待つ時間がなくて、急いで荷造りをして置き手紙をして出て行った。もちろんあとから電話や手紙で連絡を取ったりはしたけれど、次に訪れる頃にはもうその人たち全員に会えるかどうかもわからない。なんでもっと余裕をもって、スケジュールを調整しておくことができなかったのか。今でもそんな感じで何ヶ月も暮らした村を離れたこと、離れざるを得なかったことが悲しくて、また何ヶ月もいたにもかかわらずそれだけの存在にしかなれなかった自分も悔しくて、とにかく悔やまれて悔やまれて仕方がないのだ。

 まあ、過ぎたことをいくら悔やんでも時は戻らないし、仕方がない。それに、そんな中でもいまだに思い出したように電話やメールをくれる友人(スペイン人も、日本人も)もいる。だから、今はただ遠い遠いスペインの地に、ほんの一時期だけ滞在していた私のことを覚えていてくれる人がいることを嬉しく思う。そして、一日も早く、単なる旅行でもなんでもいいからスペインを再訪して、きちんとお別れができなかった友人たちにまた会いたい。そう願う今日この頃である。



No.184
5月24日 むく(マドリード)

 以前は市内に住んでいた。車での通勤距離は片道12Kmであった。朝の渋滞を避けるために早く自宅を出るのが習慣になっており、朝の通勤に要する時間は約15分程度であった。ところが夕方の帰宅時は良くて30分、大体40分、下手をすると1時間かかっていた。

 現在マドリード周辺では高速道路網の整備が進んでいる。過去、環状線といえばM30であった。その外側にM40ができ、その全面開通はつい最近のことであったと記憶している。現在はその外側にM45およびM50が造られているのである。また、以前はマドリードから放射状に出ていた1番から6番までの国道(=無料の高速道路)に平行して有料の放射状高速道路も続々と開通している。

 現在の住居は国道N4の27Km地点の出口を出たところにあり、通勤距離は片道42Kmである。朝早く家を出ているおかげで通勤に要する時間は、朝40分、夕方も大体40分から50分程度である。市内に住んでいた頃のように、夕方の方が倍以上の時間がかかるということも殆どない。

 この通勤距離もM45が開通、M50が一部開通してくれたおかげで以前より短くなり、それにより朝の通勤時間も30分ですむようになった。以前には通じていなかった各道路を結ぶ道がいつの間にか開通しているということもあった。新しい通勤ルートを開拓するという楽しみを持てるということでもある。



No.184
5月18日 Meche(京都)

 最近お気に入りを手に入れました。
 それは耳かき。

 小さい頃からしょっちゅう母を追いかけて耳をほってもらっていた私は、「もう何にもないからやめときなさい!」という母の忠告に耳を貸さず、目を盗んではホリホリして、中耳炎になっていた。
 大人になった今、1人暮らしの私は耳ほりし放題! さすがに中耳炎にはならなくなったけど、たまにやりすぎて痛くなっちゃって、薬の付いたガーゼを詰めたりしている。

 そんな耳ほりマニア(?)の私はマイ耳かきをたくさん持ってる。おしりに飾りの付いた竹製のベーシックなタイプのもの、金属製のもの、本来それは耳かきじゃないだろうというものまで含めると10本以上はある。なんでそんなに集めちゃったのかというと「これ〜っ!」という1本にめぐりあえてなかったから。
 でも、もう集めなくてもいい感じ。やっとめぐりあった耳かきは、痒いところを的確に探り当ててくれる。その上、見た目もなかなかキュート! 竹製で、おしりに付いてるスパイダーマンが、ふるふるっと首を振る。

 ところで、スペインやラテンアメリカではあんまり耳をほらないみたい。だから「危ないからやめといたほうがいいよ」とよく注意されたりする。じゃあ、彼らはどうするのかというと、綿棒でくりくりするそうだ。う〜ん、それで十分なのかな? それで気持ちいいのかな? といっても、本来の目的はきれいにすることだから、気持ちよさはべつにいいんだけど・・・。あ〜ん、でもやっぱり私は満足できないよ〜! 気持ちよくないとヤダよ〜!

 と思っていたら、この日本、耳ほりに気持ちよさを求めているのは私だけじゃないみたい。なんと大阪には“耳ほり専門店”がある。何種類もの竹製耳かきを使って、カメラに写しながら、おじいちゃんがしっかりきっちりほってくれるお店。マニアの私にはたまらない。想像しただけでうるうる来ちゃう。で、行ってみたくていろいろ情報を集めてみたけど、これがお高いっ! 「気持ちよさには代えられない」とは思ってみても、毎日これだけスパイダーマン君でほじくってる私は、母の言葉を思い出す。「もう何にもないからやめときなさい!」
 くすん。



No.182
5月10日 Taka(東京)

 先日、ゴールデンウィークを利用して鹿児島の実家へと帰省してきた。今年は全国的にあいにくの天気が続いたようで、鹿児島も曇りや雨の日ばかり。それでも友人たちと海へ行っては、”亀の手”と呼ばれる貝や、とこぶしなどを獲ったりしてミニバカンスを満喫。また、久しぶりに初恋の人とも遭遇してルンルン気分でいた私に、母が一喝。
 「アナタみたいなのん気な人を私は見たことがない!」

 一気にバカンス気分も覚めて喧嘩に。でも、なぜ母親がそういう発言をしたかというと、その前夜のこと。友人宅から酔っ払って帰ってきた私が開口一番で、「来月はスッペイン♪ スッペイン♪ あースッペイン♪ オーラ ママー ブエナスノーチェス」な〜んて、浮かれ気分で声をかけたからだ。そのときは、呆れた顔を見せただけで珍しく何も言わなかった母だったが、もんもんとした怒りを翌日まで溜めておいて、それがどうやら一気に爆発したらしい。

 「こんなご時世にスペインへ行こうだなんてアナタは何を考えているの? 12月に行った人がまた6月に行くだなんて。マドリードではあんなことがあったっていうのに! スペインスペインなんて言ってる暇があったら結婚でもしなさいッ!」

 支離滅裂である。支離滅裂であるが、言いたいことが3つあることはわかった。一つは、緊迫した世界情勢のなかで、テロが実行されたばかりのスペインへ浮かれ気分で行くなということ。もう一つは、年に2回もフラフラと海外旅行をして何様のつもりだ。そして最後の一つは、いい加減に結婚せいッ! である。

 はぁ……、とため息をついたところで、反論は何一つできない。おっしゃるとおりである。だから、喧嘩したとは言っても私は黙って家事の手伝いをしながらご機嫌をうかがうしかない。36歳にもなって情けない話である。しかし、年々と年老いていく親を前に、これでいいのか? 確かにお気楽すぎじゃないかという疑問は残る。では、どうしよう? 結婚か? これは難しい。うーん。かと言って旅行はやめられない。つらつらと夜通し考えてみた。

 結果、このところの旅では、仕事から逃げることだけを考え、自分なりの何のテーマも持たずに行っていたことを反省。今後は、テーマを作り目的のある旅をしよう、そしてそれらを自分の本業へと生かそうではないか、そう改心した。まあ、何の説得力もない改心かもしれないが……。

 とにかく、どんなときにも心配をしてくれる親がいてくれることは本当にありがたく、嬉しいことである。この原稿を書いている今日は、母の日。早速、この改心を伝えてみよう。 



No.181
5月3日 かおる(マドリード)

 おおお、やるな、と思った。

 日本の若手グループによる太鼓のコンサート。

 たまたま小さな新聞広告でTambor Japone's(「日本の太鼓」の意味)の文字を見つけた。ふーん、今週の末か・・・ グループの名前は聞いたことがない。アルファベットの文字を頼りにインターネットで検索してみると、そのグループのHPを見つけた。どうも海外を中心に活動しているグループのようだ。ちょっと興味がわいて、コンサートに行くことに決めた。

 ポスターを見てみると、ジャパネスクのイメージを前面に出しているが、かなりおしゃれ。その期待を裏切らず、ステージ衣装はねじり鉢巻にハッピ、上半身裸にふんどし姿、という日本で見たことのある定番のような姿とはまったく違った、シンプルでおしゃれな衣装。女性も半数いる。演奏も日本のテレビなんかで見たりした伝統芸能とはちょっと違って、太鼓のパーカッションとしての可能性を引き出した演奏に思えた。「和」をベースにしながら、「和」に縛られていない自由な演奏。そして、いわゆる日本の体育会系の規律というのか、きれいに整った動きも見ていてとても気持ちいい。それに演奏している人たちのなんて楽しそうなこと。パフォーマンスも十分に考えられていて、スペインの観客も大歓声の舞台だった。

 私が思うに、異文化紹介のイベントで難しいのは「これがわたしたちの文化・伝統です、紹介します」という一方通行のコミュニケーションになることが往々にしてあるのではないか、ということ。それはそれでもよいのだが、一部のその文化に造詣の深い人たちだけが楽しめたり、珍しさからくる驚きとか関心、満足に近いものだけに終わってしまう場合も少なくない。
 彼らの舞台を見て、普段スペイン人が接することのない「和太鼓」を介して感動を分かち合えるまでのエンターテイメントに仕上げていたのには敬服した。

 日本の伝統芸能を今風にアレンジした舞台や音楽が見直されている、とも聞いている。古来の伝統を重んじる派から見るともしかすると型破りなのかもしれない。でも、伝統に対してのリスペクトを保ちつつ、そこに新たな創造を加えて生まれた作品にはパワーがあり、国境を越えて受け入れられる可能性がより大きいのではないかな、と思った。

 少し前の話だが、日本の文楽作品をフラメンコで表現した舞台がスペインで上演され、スペインの観客をあっと言わせた。これがスペインの観客にも大きな感銘を与えたのは、日本の文化と組み合わせながらも、スペインの一つの伝統芸能といえるフラメンコに対して大きなリスペクトを持っていた作品だったからだと私は思っている。

 単に奇抜さを狙った伝統芸能や楽器演奏のアレンジだけでは観客の感動を呼び起こすことは不可能なんだと思う。おそらく伝統芸能と新しい試みの間で相反する要素に苦心する場面も多いはず。でも、そんなギャップを乗り越えて出てくる作品にはこれからも大きな拍手を送りたい。

 

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