ちょっと前のわたしたち

【No.177】4月6日 Meche * 【No.178】4月12日 むく
【No.179】4月20日 Maki * 【No.180】4月26日 Sara

No.180
4月26日 Sara(グラナダ)

 4月17日土曜日の日記。

 大きな一日が終った。昨夜は地元グラナダで結婚後初の旦那(歌い手)と私(踊り手)の共演だった。
 結婚前も共演はあったけれど地元でしかも、フラメンコの玄人ばかり集まるところでは初だ。ギタリストはスペインでも十指に数えられるパコ・コルテス。
 もし私がこけたら?ギタリストは頑張って探せばいい。でも、いくら旦那でもきっともう一緒の仕事には呼んで貰えないだろうという覚悟で臨んだ昨夜の踊りだった。

 ヘスス・ファハルド(旦那)とパコ・コルテスのステージを踊りで締めくくるのが私の役目でした。曲目は“SOLEA”(孤独)というフラメンコの根源の曲を選びました。一番踊りこんでるからという理由で。目立つミスも無く自分らしく踊った。ただしこの三人のコンビは初なので三人共が緊張していたのは事実だし、旦那とパコ先生はいわゆるフラメンコの深い歌の専門家で、踊り伴奏は専門ではない。

 失敗は許されない!という気持ちで踊る私の心が表れたらしく、私の踊りを長年見ている友人からは、ちょっと表情がいつもより硬かったという報告があった。真面目なキャラクターの曲種だったのでまあね、許容範囲かねという事にしておいた。
 踊っていて客席からの掛け声も充分あったし、拍手も沢山頂いた。終ってからもよかった、よかったと皆が声をかけてくれた。ほんとかなー。外人がフラメンコ頑張って踊るとそれくらい誉めてくれるのよね、と疑い深い私。旦那の声を聞いてやっとほっとした。“良く踊ったよ”って。しかも、主催者がもの凄く喜んでギャラを一万余分にはずんでくれたことは旦那もちょっと感動していた。旦那もものすごく良く歌ったのだ。夫婦の公演を自分達で最高だった!と言っても説得力ないかもしれないけど(笑)。
 でも、信じてください、スペインでギャラのはずみはなかなか無いって! いや〜励みになります。私の芸も明日の食いぶちにつながるのだ!
 旦那との共演もこれからも楽しみだし、ギタリストも誉めてくれた。この三人のコンビでできるとこまでやっていこう。

 夜中二時に終った公演後もアーティストの輪ができ、朝方五時までフラメンコの宴会は続いた。

Sara Ayako Ishikawa



No.179
4月20日 Maki(横浜)

 うちの姉は、現在3人目の子供を妊娠中。出産予定は6月だ。一番上の姪っ子は3歳9ヶ月、2番目の甥っ子は2歳4ヶ月。そしてもうすぐ3人目と、結婚してまた4年半なのにもう3人の子持ちっていうのもすごいものだ。ということは、私は3人も甥っ子姪っ子を持つ叔母になってしまうわけだ。姪っ子たちは可愛くて仕方ないし、新しい家族がまた増えることもすごく楽しみ。でも、なんだかますます自分が年を取っていくような気がしてため息が出てしまう。もちろん「おばさん」とは呼ばせていないし、今後も絶対に呼ばせないわよっ!

 姪の夏子が生まれたのは2000年7月12日、そのころ私はスペインにいた。ステイ先で写真付きメールを受け取り、初めての姪っ子誕生に、ホストファミリーみんながおめでとうを言ってくれた。メールで写真が送られてくるたびに「私の姪よ」と周りに見せて叔母バカぶりを発揮していた。帰国後、初めて姪っ子に「ご対面」した時の感動は、今でも鮮明に覚えている。
 そんな夏子もこの夏には4歳になる。身長は大きく110cm近い。電話すると「マキねえね?」と飛んで出てきてくれる。月日の経つ矢のような早さに驚くばかり。そしてその間、私もいろんなことがあり、スペインにはその後まだ一度も行けていない。夏子の成長は、そのまま私のスペインへの思い出の深さになっていく。
 夏子はこの4月で幼稚園生になった。どんな様子か気になって、私も両親も毎日のように姉の家に電話してしまう。「全然泣いたりもしないし、毎朝楽しそうにお迎えバスに乗って幼稚園に行って、ちゃんと全部お弁当を食べて、ただいまぁ〜って元気に帰ってくるよ。」と言う姉は、どんどん成長して親から離れていく子にほっとしているようで、ちょっと寂しそうでもある。

 おかしいのは、弟の丈雄のほう。何しろ年子なので、自分も何でもかんでも同じものを欲しがる。子供同士で取り合いのケンカになってしまうので、お弁当箱もリュックサックもぜぇ〜んぶ2人分用意することになった。毎朝幼稚園バスの停留所に一緒に連れて行くと、自分もバスに乗りたいと騒ぐという。夏子と離れるから泣くのではない。ただバスに乗りたいのだ。その証拠に、夏子が帰ってきても走り去るバスに泣くんだそうだ。丈雄の分も毎朝同じようにお弁当を詰めて、お昼に家でそれを食べているという。食べることが何よりも大好きで、嫌いな言葉が「ごちそうさま」である丈雄は、もっと!もっと!とお弁当のオカワリをせがむらしい。「今日なんて、夏子を送り出してから午前中に丈雄と買い物に行って、帰ってきたらもう自分でスプーンとフォーク出してお弁当出して座ってるんだよ。」今日もそんな電話があって、その光景を想像して家族で大笑いした。

 3人目は、エコーで見る限りではどうやら男の子らしい。一体どんな子が生まれてくるのやら。ま、ひとつ間違いないことは、ますます私の叔母バカに磨きがかかるってことかな。



No.178
4月12日 むく(マドリード)

 中国の歴史上の人物を取り上げている小説家、宮城谷昌光にはまっている。

 思えば日本の知人が「晏子」の新刊本をくれたのが約10年前である。漢字が多く使われており、また当時は中国にあまり興味がなかったので読むのを躊躇したものだった。ところがいったん読み始めたら宮城谷氏の筆使いや書かれている晏子という人物に惹かれてしまい、一気に読み終えたことを覚えている。

 宮城谷氏の本をもっと読みたくなって既刊本を日本から取り寄せた。また新刊が発行されるたびに注文している。更に、中国の歴史上の人物に興味が出て、他の小説家が書いた中国物も読み始めるようになった。

 スペインには日本の本を扱っている本屋がないので、日本に帰国した時やベルギー出張の際は必ず本屋に行き、買い込んでしまう。通常はもっぱらインターネットでの注文である。注文してから届くまでに約2週間かかるが、本の代金および送料だけの支払いなので比較的割安である。ちょうどセマナ・サンタの前に注文していた4冊の本が届いた。

 セマナ・サンタは4連休である。金曜日の午後から本を読み始めた。土曜日の朝一番で買い物を済ませ、後はどこにも出ず自宅で一人読書三昧の週末であった。今回は北方謙三著の「楊家将」の上・下巻を読破、他にもう一冊。数日したら宮城谷氏の「香乱記・下巻」が届くだろう。今から楽しみである。



No.177
4月6日 Meche(京都)

 6年間DJを務めたラジオ番組が、この3月で終わった。

 人生なんて本当に分かんないもので、スペイン留学を終えて日本でのんきに暮らしていた私は、ある日突然その番組のDJに起用された。
 DJという職業に就くことを夢見てがんばってる人からすれば、うらやましい話なのかもしれないけど、そんな仕事をするなんて考えたこともなかった私にとっては、不安と戸惑いの毎日の始まりだった。

 何の訓練も受けたことのなかった私は、話し方はもちろん、“不特定多数の見えない相手に対して、マイクを通して言葉を発信する”ということがどんなことなのかを、実際仕事をしていく中で学んでいかなければいけなかった。

 喜んでくれる人がいれば傷つく人もいる。自分が何気なく発した言葉が与える影響力を知って、話すことに臆病になった。
 たとえ体調や精神状態が良くない日でも、聴いている人が持っている(望んでいる)私のイメージに応えなければいけなくて、苦しかった。
 一方的に寄せられる好意が膨らみすぎて、恐怖を感じた。
 インターネットのHPでは中傷されて、悲しくなった。
 プライベートの時間でも、職業がばれて逃げ場のないような気持ちになったり、私を知っている人がいるかもしれないと、やりたいことを我慢した。

 つらいこと多かったな・・・。仕事について振り返るとそう思う。
 でもプラスとマイナスがあって初めて電気の流れが始まるように、人生も相対するものが存在して初めて動き始めるような気がする。
 憧れていたアーティストのライブに招待されたり、直接話をする機会をもらったり、以前の私なら考えられなかったようなことも、DJだったからこそ経験できた。励ます側の私が、リスナーからのメッセージに泣きたくなるぐらい励まされた。

 喜びと苦しみの間で激しく動く人生を、私はちゃんと “生きた”と思う。
 幸せだったな・・・。この6年間を振り返ると心の底からそう思う。
 だから4月からも、私の職業はDJ。

 

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