|
4月に変形性股関節症の手術(右足)をして、6月11日にやっと退院した。64日間の入院生活は、スペインで過ごした1年間とは全く違う意味で、もっと人間としての根本的な部分で、人生観を大きく変える期間だった。初めての入院、手術、寝たきり生活、車椅子、松葉杖。そして退院後もまだしばらくは小さな杖が必要。今まで知り得なかったいろんなことを経験し、考え、多くの人と知り合い、自分や世の中について多くを学んだと思っている。
10月後半には左足も手術するのでやっとハーフタイムという感じなのだけど、今回のオペ足のリハビリと次のオペに向けての体力作りのために、すでに17日から地元のスポーツクラブにも通っている。実は、このスポーツクラブの入会時にひとつ不安な点があった。私と同じ部屋に同じ疾患で入院していた女性が、やはり退院後のリハビリのために近所の某クラブに通おうとしたら、「杖を使用する場合、プールはOKだけどマシンエリア(エアロバイクや筋トレのエリア)はダメで、どうしてもという場合は医師の診断書が必要で、さらに短期間の杖使用でなければ入会は不可」と言われた、という話を聞いていたからだ。
プールはもちろんだが、自転車こぎは体重の負荷をかけずに足腰のトレーニングができるので、この疾患のリハビリにはとても役立つのだ。クラブ側としては杖が必要な状況の人が怪我でもしたら責任を取れない、ってことなんだろうけど、入会拒否やコース制限までする権利があるの?じゃあ、早くいえば健常者以外は入会するなってこと?元気な人がさらに筋力をつけたりダイエットしたりするのはよくて、体の弱い人が必要なリハビリをするのはダメなの?何のため、誰のためのスポーツクラブなの?「だから私は今はプールだけで自転車こぎはやっていない、何だかまだバリアフリーには程遠い日本の現状を思い知ったよ」と彼女は言っていた。その話は、同じ疾患を持つ入院仲間のあいだではかなりショッキングだった。
幸い、私が入会したクラブは別会社なので方針が違うようで、全エリア杖OK、館内の間取りもかなりバリアフリーで、入会目的欄には「リハビリ」の項目もあり、見学時もスタッフが非常に気を遣ってくれて、とても好印象だった。おかげで私はプールも自転車こぎも筋トレも、すべての設備をとても快適に利用できているが、クラブによって何故こんなにも違いが生まれるのか・・・。
それでも、やはり杖で館内を歩き、シャワー室でも25針分の大きな傷口を人目にさらしていると、よく「かわいそうね」系の視線を感じる。半年後には反対の足にも傷が増えると思うと憂鬱ではあるけど、自分としてはあまり気にしていない。いや、気にしないようにしてる、といった方が正しいのかも。もちろん傷が気になるのは老若男女同じだと思うし、少しでも傷が目立たなくなるように陰の努力もしている。でも、変に傷を隠そうとは思わない。これは私の勲章だから。辛いときもあるけど、この傷口も、疾患も、全部ひっくるめて私の人生の一部だと今は思っている。
この疾患は手術をしたから100%治ったというものではなく、せっかく手術した骨に負担をかけないように、一生持たせるために、自分の関節と相談しながらうまく付き合っていかなくちゃいけない。ほんと、ある意味ライフワークみたいなものだ。そういえば、退院前の指導で病院のPT(理学療法士)さんも言っていた。「トレーニングを義務だと思わず、趣味にしてください」って。
杖で街を歩いていると、ほんの些細なことにヒヤッとさせられることが多い。段差、道の傾き、砂利、マンホールの溝、走る子供、ローラーシューズの子供、前を見ないで歩く人、障害物など。逆に、エレベーターやお店のドア、レジなどでほんのちょっと気を遣ってくれる人がいるだけで本当にありがたいものだ。私がもっと元気になったときには気をつけよう、と思うことがたくさんある。私は今、「障害者」とまではいかなくても、完全な「健常者」でもない生活をしている。そして今後もその不自由さは色々な面で続くだろう。でも、自分が不幸だとは全然思っていない。その分、今まで、自分が元気なときには見えなかったことが見えるようになったから。
|