ちょっと前のわたしたち

【No.136】6月2日 Norie * 【No.137】6月10日 ナオミ
【No.138】6月16日 むく* 【No.139】6月23日 Maki

No.139
6月23日 Maki(横浜)

 4月に変形性股関節症の手術(右足)をして、6月11日にやっと退院した。64日間の入院生活は、スペインで過ごした1年間とは全く違う意味で、もっと人間としての根本的な部分で、人生観を大きく変える期間だった。初めての入院、手術、寝たきり生活、車椅子、松葉杖。そして退院後もまだしばらくは小さな杖が必要。今まで知り得なかったいろんなことを経験し、考え、多くの人と知り合い、自分や世の中について多くを学んだと思っている。

 10月後半には左足も手術するのでやっとハーフタイムという感じなのだけど、今回のオペ足のリハビリと次のオペに向けての体力作りのために、すでに17日から地元のスポーツクラブにも通っている。実は、このスポーツクラブの入会時にひとつ不安な点があった。私と同じ部屋に同じ疾患で入院していた女性が、やはり退院後のリハビリのために近所の某クラブに通おうとしたら、「杖を使用する場合、プールはOKだけどマシンエリア(エアロバイクや筋トレのエリア)はダメで、どうしてもという場合は医師の診断書が必要で、さらに短期間の杖使用でなければ入会は不可」と言われた、という話を聞いていたからだ。

 プールはもちろんだが、自転車こぎは体重の負荷をかけずに足腰のトレーニングができるので、この疾患のリハビリにはとても役立つのだ。クラブ側としては杖が必要な状況の人が怪我でもしたら責任を取れない、ってことなんだろうけど、入会拒否やコース制限までする権利があるの?じゃあ、早くいえば健常者以外は入会するなってこと?元気な人がさらに筋力をつけたりダイエットしたりするのはよくて、体の弱い人が必要なリハビリをするのはダメなの?何のため、誰のためのスポーツクラブなの?「だから私は今はプールだけで自転車こぎはやっていない、何だかまだバリアフリーには程遠い日本の現状を思い知ったよ」と彼女は言っていた。その話は、同じ疾患を持つ入院仲間のあいだではかなりショッキングだった。

 幸い、私が入会したクラブは別会社なので方針が違うようで、全エリア杖OK、館内の間取りもかなりバリアフリーで、入会目的欄には「リハビリ」の項目もあり、見学時もスタッフが非常に気を遣ってくれて、とても好印象だった。おかげで私はプールも自転車こぎも筋トレも、すべての設備をとても快適に利用できているが、クラブによって何故こんなにも違いが生まれるのか・・・。

 それでも、やはり杖で館内を歩き、シャワー室でも25針分の大きな傷口を人目にさらしていると、よく「かわいそうね」系の視線を感じる。半年後には反対の足にも傷が増えると思うと憂鬱ではあるけど、自分としてはあまり気にしていない。いや、気にしないようにしてる、といった方が正しいのかも。もちろん傷が気になるのは老若男女同じだと思うし、少しでも傷が目立たなくなるように陰の努力もしている。でも、変に傷を隠そうとは思わない。これは私の勲章だから。辛いときもあるけど、この傷口も、疾患も、全部ひっくるめて私の人生の一部だと今は思っている。

 この疾患は手術をしたから100%治ったというものではなく、せっかく手術した骨に負担をかけないように、一生持たせるために、自分の関節と相談しながらうまく付き合っていかなくちゃいけない。ほんと、ある意味ライフワークみたいなものだ。そういえば、退院前の指導で病院のPT(理学療法士)さんも言っていた。「トレーニングを義務だと思わず、趣味にしてください」って。

 杖で街を歩いていると、ほんの些細なことにヒヤッとさせられることが多い。段差、道の傾き、砂利、マンホールの溝、走る子供、ローラーシューズの子供、前を見ないで歩く人、障害物など。逆に、エレベーターやお店のドア、レジなどでほんのちょっと気を遣ってくれる人がいるだけで本当にありがたいものだ。私がもっと元気になったときには気をつけよう、と思うことがたくさんある。私は今、「障害者」とまではいかなくても、完全な「健常者」でもない生活をしている。そして今後もその不自由さは色々な面で続くだろう。でも、自分が不幸だとは全然思っていない。その分、今まで、自分が元気なときには見えなかったことが見えるようになったから。



No.138
6月16日 むく(マドリード)

 憂鬱な時期がやってきた。湿気がなく40度を越えるマドリードの夏が大好きという人間であるから気候の話ではない。サッカーの話である。

 そろそろシーズンの終わりが近づいている。一位のReal Madridと二位のReal Sociedadが2ポイント差となっており、(Arrobaspainのホームページより)どちらかが優勝するのであろうが、Real Madridが優勝することだけは勘弁して欲しいものだ。

 Bernabeuで試合がある日は、ただでさえ交通量が多い市内の渋滞がよりひどくなる。通常20分程度で帰宅できるところを、40分とか下手をすれば1時間近くかかることもよくある。おまけにサッカー場周辺は違法駐車の車で一杯になる。郊外に移転でもしてくれないかな。そうすればサッカーがある日でも市内の渋滞が少しは低減されるであろうに。

 これがReal Madridが優勝でもした日にはBernabeuからCibelesの辺りまで道路が封鎖されてしまう。歩行者に開放するのではなくReal Madridファンに占拠されるという言い方のほうが正しいであろう。

 以前、食事が終わって知人を送って帰ろうとしたらちょうどReal Madridが優勝した日にぶつかってしまい、タクシーは途中で動かなくなってしまい、最終の地下鉄で帰宅する羽目になってしまったということがあった。

 どうしてたかがサッカーにバカ騒ぎをするのか到底理解できない。また、たかがサッカーチームが優勝したくらいで公共の道路を封鎖してまでファンのために開放するのか、あきれるのを通り越して憤りを感じてしまう。常識が通用しないことがよくあるスペインのことだから、と言ってしまえばそのとおりとしか言いようがないが。



No.137
6月10日 ナオミ(日本)

 先週末、六本木で開催されていたバスクフィルムフェスティバルに7日、8日の2日間行ってきた。7日の朝、新幹線で東京入りし、そのまま六本木へ直行。これがテレビでよく見る六本木ヒルズなのね・・・と森タワーを見上げ、ふと視線を下ろすと、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督が目の前に!実はわたし、この監督に会いたくてはるばる出掛けて行ったのだった。

 映画祭が開催されるヴァージンシネマズのサイトには、来日予定者として名前が記されていたけれど、本当に来るのだろうか、と半信半疑だった。でも、6日の夜、一足先に映画祭に出掛けていた知人から電話がかかってきた。「アレックス・デ・ラ・イグレシア監督来てます!」興奮した口調でその一言だけ言って、電話は切れた。だから、デ・ラ・イグレシア監督が来日していることはわかっていたのだけれど、映画祭会場にたどりつく前に会ってしまうとは・・・。心の準備が全くできていなかったけれど、声を掛けると、まずはほっぺにチュウのご挨拶。頭の中が真っ白になりながらサインをもらい、震える手をおさえながら写真を撮った。監督と一緒にいたスペイン人が写真を撮ってくれるというので、カメラを渡し、夢のようなツーショット写真を撮ってもらった。
 その写真を撮ってくれた人をどこかで見たことがあるような気はしたのだけれど、そのときは、デ・ラ・イグレシア監督で頭はいっぱいで、たいして気にとめていなかった。そして、最後にまた監督とチュウをして別れたのだった。

 その後、スペイン映画ファンの人たちと話をしていて、その中の1人が「あの一緒にいる人、脚本家らしいよ」と教えてくれた。そう、写真を撮ってくれた人はホルヘ・ゲリカエチェバリア氏だった。どうりで見たことがあるような気がしたわけだ。ゲリカエチェバリア氏が撮影した監督とのツーショット・・・なんて贅沢な。まだ現像していないけれど、ちゃんと写っていますように・・・。



No.136
6月2日 Norie(バリャドリード)

 もう一ヶ月前の話になるが、犬の避妊手術をした。わたしが住んでいる村では、ウンチも拾わない、放し飼いにする、という風に犬の飼い主のモラルが全般的に低い。さすがに大型犬を放し飼いにしている人はいないので、身の危険を感じることはないのだけど、我が家の犬はメスなので、発情期のときは放し飼いの小さいオス犬にさんざん苦労させられたのだ。

 村にある唯一の獣医の話では、避妊手術はホルモンのバランスが整う、一歳半から二歳の間が適当だということで、前回の発情から二ヶ月経過したときを選んで手術をお願いする。

 スペインの歯医者も、一般家屋を改造したようなところがよくあるのだけどこの獣医のところも医院独特の冷たい機械的な香りが全くしない、はっきり言えばレントゲン施設もないようなところなので、「大丈夫かしらん」と内心不安もあったのだけど、手術後に何かあったとき近い方が安心だから、という理由でお任せした。

 ほんとは、獣医が近所の人の弟だから、という理由もかなりあった。(笑)

 果たして手術はうまく行き、経過も順調。難を言えば、犬が食欲の固まりになってしまったこと。避妊手術をすると太りやすくなる、という話のとおり、以前はいやいや食べていたドックフードもあっという間に食べきっちゃう。

 先日なんて、知らない人に「この犬、妊娠してるの?」と真顔で聞かれ、これは本格的に飼い主ともどもダイエットしなければ、と思う今日この頃。

 

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