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2M12。マドリードが2012年のオリンピック開催の誘致に向けてキャンペーンを展開している。
1000という意味のMIL(ミル)とマドリードの頭文字、Mを掛けているのだろうか、2M12が展開中のポスターなどでみる唯一のキャンペーン・メッセージだ。
同年にオリンピック誘致の名乗りを上げていた同国内のライバル、セビージャに勝ったこともあり、マドリードではこのキャンペーンが継続している。
キャンペーン・マークはあの、バルセロナ・オリンピックでもマスコットの「コビー」を担当した、ハビエル・マリスカル氏のデザイン事務所のもの。スペイン語のアルファベット、エニェに固有である、Nの文字上に付く「ニョロ」を縦にしたようなデザイン。真っ赤なそれは聖火の炎のようにもみえる。
私の仕事場の近くに、このオリンピックが開催されれば競技場の一つになるであろう、スポーツ・パビリオンがある。その名も「ラ・ペイネタ」。ペイネタとは、フラメンコの女性の衣装などで頭に付けている飾り櫛のこと。建物の外観がそれに似ているから、こういう通称で呼ばれている。
この「ラ・ペイネタ」は、マドリード市内のサン・ブラス地区をちょっと抜けて市街地から外へ出ていく街道沿いにある。
今でも上品な地域とは言い難いが、少し前まではマドリードでも有数のかなり荒れた地帯で、住人層もとても高水準とは言えない、住むにはちょっと敬遠する、というような地帯であった。
最近、このラ・ペイネタの前のロータリーに大きくこの2M12のロゴのモニュメントが建てられ、ロータリーは花文字で2M12とかたどられた。きれいにペイネタが化粧されたように見える。
そういえば、このあたりもどんどん新しいマンションなどが建設ラッシュで、一昔前までの「安くても住むにはごめん」、といったような敬遠は何処へやら、目をむくような値段の新しいピソ(マンション)が売りに出されている。不動産デベロッパーや不動産への投資家は日毎に資産を増やし、住宅価格の値上がりは上昇の一途。庶民には住宅購入が手の届かぬ所へ行ってしまった感さえある。このサン・ブラスでさえ。
ペイネタの前にある、花で化粧されたロータリーのすぐ近くの空き地には、数ヶ月前までルーマニアのジプシー達が家財道具を全部詰め込んだバンを駐車し、生活していた。近くのベンチは彼らの居間の長椅子といったような風情で、よく家族が食事をとったりしている光景がみられた。最近、このルーマニアン・ジプシー達の姿も見ない。オリンピック誘致キャンペーンの地域浄化のために追われたのでなければよいが、と余計な心配をしてしまう。
地元が発展し、豊かになることはよいことだけれど、最近スペインという国もこの発展競争にもまれて、何かを忘れていっていないか、と思ってしまうのは私だけだろうか。
非効率だけれども、人間的な「弱きを助け、強い力に立ち向かう」ドン・キホーテ的な精神を捨てて、弱いものを切り捨てていくような社会にスペインはなって欲しくないもんだ。
ルーマニアン・ジプシーたちの生活の長いすとなっていた、なんとなく取り残されたようなベンチの周りに舞う吹き溜まりの紙くずを見ながら、このごろの世知辛さに身をやつす我が身としてもひしひし感じた。
【写真説明】
(上) 「ラ・ペイネタ」とロータリーの2M12の花文字。
(下) とりのこされた感のベンチと空き地。 |