「プレステージ号の重油流出事故のニュース」 (2002年11月19日)

(新聞による発表)
 プレステージ号の流出汚染による鳥への影響、大西洋と地中海全域で18種・数万匹に

 

 ガリシア沿岸に生息する鳥にとって重要な7つのエリアのうちの一つが、重油に覆われており、他の3つも大変危険な状態である。 一年のうちこの時期、大西洋と地中海から18種類の渡り鳥がガリシア沿岸へとやって来る。 食糧が豊富であるため、嵐の時には治まるまでガリシアに留まる。 SEO/BirdLife(スペイン鳥類学協会)は、これらの鳥を海岸から見つけ出すことは難しいが、多数の鳥が荒れた海の汚染の影響を受ける可能性があると見ている。

 大災害エリアにいる海洋鳥の元の生息地は以下のとおり。

a. イギリス諸島、フランスのブルターニュ、そしてそれより北部の欧州の大西洋の海岸
b. グリーンランドとカナダ
c. 南大西洋諸島(フォークランド諸島、トリスタン・デ・クンア)
d. 地中海
e. ガリシアで繁殖し、1年の残りをそこに留まる定住鳥

 ガリシアには、イベリア半島にいるオオハシウミガラス(Arao Comun)の最後の群れが生息している。 オオハシウミガラスは事実上、絶滅亜種である。 さらに、イギリスとフランスのウミガラスも避寒と季節移動の間ガリシアにやってくる。 また、豊富な食料を求めてこれらの海へやってくる、ミズナギドリ(pardelas)、ウミツバメ(petreles)、シロオオツカドリ(alcatraces)、pagalos、charranes、カモメ(gaviotas)、カワウ(cormoranes)のような他の幾千もの海洋鳥も一緒だ。 この時期、普通なら何万匹ものシロオオツカドリの横断が毎日観測される。 それらの鳥の全てが現在、災害エリアにおり、最新データによると、重油により無数の鳥たちが死亡しただろうと指摘される。


鳥への重油の影響

 この時期、鳥が流出重油の影響を受ける可能性は高い。 なぜなら、嵐の時、ガリシアの浅瀬や大西洋のガリシア沿岸のような、より好ましい場所に鳥が集まるからだ。

 まず、鳥が水に完全につかることを可能にしている、羽の防水が重油によって機能しなくなった。 また、寒さ保護も機能低下し、鳥たちは低体温により死んでしまう。 一方で、濡れた羽により体重が増え、飛行が非常に難しくなっている。 また、浮力の低下で溺死にいたる。 さらに、多くの鳥は、羽を洗おうとする時に重油を飲み込んでしまい、中毒になってしまう。


緊急法的措置

 残念ながら、生きている状態で救出され回復センターに運ばれても、その多くは重症を負ったために、生き長らえない。 影響を受けた鳥の個体数が回復するには、何年もかかるだろう。 漁業・観光分野への経済インパクトもすさまじい。 このような大災害を防止するために動く必要性がはっきりした。海上交通における適切な法整備によって達成できるだろう。 

 さらにSEO/BirdLifeは、汚染流出によって影響を受けた地域の一掃作業にかかる費用の経済補てんを保障する、環境責任に関する欧州幹部の設置を要求した。


エリカ号の重油災害の結果(フランス・ブルターニュ沿岸、1999年)

 10,000トンの原油が流出、欧州で大変重要な海洋鳥の巣造りエリアの一つに大きな汚染を引き起こした。 44,000種、120,000〜300,000の鳥が死んだ。

 この生態への大災害よる費用は108億ユーロだったと考えられている。 そのうち、23〜30.5億は海岸と鳥の重油除去に、19億は漁業分野、30.5億は観光分野に費やされた。

注:
(1)影響を受けた鳥にとって重要な区域(SEO/BirdLifeの1998年目録より)

・シエス諸島(Islas Cies):カモメ(Gaviota Patiamarilla)の世界で最も大きな群れのひとつであり、羽冠カワウ(Cormoran Monudo)の欧州最大の群れ。 イベリア半島のウミカラス(Arao Iberico、ほとんど絶滅状態)も生息。

・オンス諸島(Islas Ons):羽冠カワウとカモメにとって重要。 イベリア半島のウミカラスが臨時繁殖する。

・アロサ(グロベ)河口(Ria de Arosa O Grove): 水鳥(aves acuaticas)、サギ(garzas)、ヘラサギ(espatulas)、カモメ(gaviotas)にとって越冬と移動の際の最重エリア。

・死の海岸北部(Costa de la Muerte):海洋鳥の繁殖と、海洋鳥、水鳥、aves paseriformesの移動と越冬の重要エリア。イベリア半島のウミカラスの最後の繁殖の群れ、また3指カモメ(Gaviota Tridactila)の最後2つの繁殖の群れがある。


(2)影響を受けた鳥種リスト

プレステージ号の重油流出によって危険にさらされている鳥種。

・バレアレスのミズナギドリ(Pardela Balear):大陸近くに生息
スペイン・バレアレス諸島でのみ繁殖している絶滅危惧種。 一年のこの時期、バレアレス諸島の繁殖の群れから、スペイン、ポルトガル、フランスの沿岸とイギリスの大西洋岸を含めた大西洋へと分散する。 スペイン絶滅危惧種の赤本(el Libro Rojo de las Aves Amenazadas de Espana)で公表されたばかりの最近の現状調査によると、現在、絶滅危惧と分類されている。 1991年に3,300近くの生殖可能なカップルがいると見られていた(Aguilar、1991)が、2000年の間に1,750〜2,125カップルに減った(SEO/BirdLife、2001)。 9年間で47%減少したことになる。 この調子が続くと、54年間で97.8%まで減少することを意味する。 個体数の減少は、主として猫や他の肉食陸生動物による捕食に関係すると考えられる。 また、延縄の釣り糸による不慮の捕獲、都市の発展と環境汚染による繁殖巣造りの破壊と悪化も脅威である。

・ピチョネタ・ミズナギドリ(Pardela Pichoneta):沖により頻繁に生息
バレアレスのミズナギドリと関連がつよい。この鳥種はイギリス諸島で大量に繁殖する。 南米の避冬場所へのルートで汚染された海水を横切るだろう。

・Paino Europeo:沖で頻繁に生息
イギリス諸島で大量に繁殖するもう一つの鳥種。 冬を大西洋の沖で過ごす。

・シロカツオドリ(Alcatraz):一般的に沖と海岸に生息
沿岸での捕食を好むので、影響を受けている可能性がある。

・羽冠カワウ(Cormoran Monudo):大陸近くで生息することが多い
海岸(断崖も含む)に生息する鳥種。

・オオハシウミガラス(Arao Comun):一般的に沖に生息、スペインの二つの群れが唯一の生殖場所
北西ヨーロッパのオオハシウミガラスや他種ウミカラスは、1999年12月フランスのエリカ号による重油流出により、100,000〜150,000匹死んだとされる。まだ個体数を回復していない。

・オオハシウミガラス(Alca):一般的に沖に生息、スペインの二つの群れが唯一の生殖場所
ウミガラスの近い親戚で、同じように欧州での個体数は、Erika号(1999)、Sea Empress号(1996), Braer号(1993), Amoco Cadiz号(1978)、Torrey Canyon号(1967)などの、近年の重油流出事故による深刻な影響を受けている。

・ニシツノメドリ(Frailecillo):沖に生息
重油流出で影響を受ける可能性が高い鳥類。


このエリアにいる可能性がある他の鳥種:
・大カイツブリ(Colimbo Grande):少数。この鳥種にとって好ましい避寒場所のひとつであるここガリシア海岸へまだ到達していない。
・ミズナギドリ(Pardela Capirotada):大量に沖にいる可能性あり
・ミズナギドリ(Pardela Sombria):沖に生息
・Paino Boreal :沖に生息
・Negron Comun:沿岸部に生息
・Faloropo Picogrueso:沖に生息
・黒頭カモメ(Gaviota Cabecinegra):沿岸部と沖に生息
・小カモメ(Gaviota Enana):沖に生息
・カモメ(Gaviota de Sabine):沖に生息
・三指カモメ(Gaviota Tridactila):沖に生息、スペインの二つの群れが唯一の生殖場所


 

 

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